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セデック・バレ 第二部 虹の橋のliliのレビュー・感想・評価

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2回目の本編鑑賞&メイキング鑑賞で気付いたこと、キャスティングの妙。モーナ・ルダオをはじめ、主人公側の重要な役に配置され見事な演技を見せたキャストの多くが非俳優だった一方で、花岡一郎・二郎やタイモ・ワリスという、深い葛藤を抱える脇役にはプロの俳優をキャスティングすることで、ここぞという場面での絵力と説得力があった。
特に、日本側に協力したことで本国では悪名高いタイモ・ワリス役には、メイキングで監督がこだわりを語っていたように、あえて馬志翔という正義感の強いイメージや繊細さを持ち合わせた俳優を配置することで、彼の人間らしい葛藤を表現することに成功している。このキャスティングにより、タイモ・ワリスは多数の人命に責任を持つ頭目として日本側に協力するほかに選択肢が残されていなかったという理不尽と、日本側が族同士の対立を利用し尽くそうとしたグロテスクな構図が浮き彫りになり、悪役に仕立て上げられてきたタイモ・ワリスもまた犠牲者であったのだということと、日本側の行ってきた植民地支配の狡猾さと悪辣さが強く印象付けられる結果になっていると思う。観る者の視点を転換させようとする監督の強い意志が感じられた。
加えて、こういった「大きな物語」の中では、ヒーローとなる男たちがフィーチャーされる陰で、往々にして置いてけぼりにされる女性たちの存在は不可視化されがちな印象があるけど、この映画では、自身の身命に関わる意思決定からすらも疎外され、ただ振り回される女性たちの困惑を描くことを憚らないことに改めて驚く。そのことがこの映画の視野の広さとバランスを担保し、説得力を増しているようにも感じた。
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