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セデック・バレ 第一部 太陽旗のliliのレビュー・感想・評価

4.8
数年ぶりに鑑賞。「どうしてこんなことに」というセデック族の女性のセリフが印象的。我々は簡単に主人公に感情移入できないが、その距離が観る者の感傷と熱狂を拒絶しているように感じる。起こった事実を淡々と描き、観る者に考えさせ、判断させることに成功している。
私が映画作品において大日本帝国の植民地支配の残酷さに触れたのは、この作品か『イップ・マン 序章』が初めてだったと思う。そして、この作品の中で受けた衝撃は今でも鮮烈に残っている。公開当時、本国ではエンタメに寄りすぎているという批判もあったようだけど、少なくとも個人的には、自国の加害の歴史に向き合うための入口として、大きな存在となったことは間違いない。
また、この映画が構想から足掛け約10年、台湾史上最大(※当時)の予算で作られたということ、そして深刻な資金不足の中でも、台湾の原住民の、しかも多くは俳優ではない人たちを、数ヶ月かけて訓練してまでキャスティングをしたというこだわりと熱意に、ウェイ・ダーション監督とこの映画に関わった人たちの心意気に改めて敬服した。
(なお、メイキングで撮影の過酷な様子を見ると、正直労働環境としてはおいおい大丈夫か…!?と思わざるを得ない。監督のそのこだわりの強さが映画の完成度の高さに直結してるわけだけど…)
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