シネラー

メメントのシネラーのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.0
クリストファー・ノーラン監督の
出世作とも言うべき本作を初鑑賞。
『テネット』(2020)の際も思ったが、
こんなにも革新的で
頭が休まらない映画はないと思った。

記憶障害を抱えながら
妻を殺害した犯人を追う主人公レナード
を描いたサスペンスだが、
その端的な逆時系列で描写される
ストーリー展開は、
20年以上前の映画でありながらも先駆的
と言っていいだろう。
冒頭で物語の結末が描かれ、
何故その状況に至ったかを
全編通して端的に描かれていくのは、
複雑なサスペンスとして面白く感じられた。
レナードの視点を逆時系列に後追い
するような描かれ方は、
短期記憶を保持できないという
彼の設定を上手く活用した作風だと思った。
逆時系列で描かれるカラー場面に反して、
時系列順のモノクロ場面が挿入されていくが、
中盤の"電話にでるな"の文面を
レナードが発見してから一気にその内容
も興味深く感じられた。
最終的にそれらが一つの真実と共に
一本の線として綺麗に繋がり
纏まっていくのは、
本作ならではの描き方だと思った。
しかしながら、
その結末は何とも言えない後味の悪さと
虚無感を残すものがあり、
記憶という存在の曖昧さに
それをつなぎ止めていく行動原理は
何なのかが分からなくなる結末だった。

本作の不満点と言えば、
頭が疲れる作風となっている為に、
軽く鑑賞できない映画である点だと
言えるかもしれない。
又、その展開が興味深いかと問われると
物語自体は平坦的である為、
観る人の集中力が試される映画だと思った。

異色のサスペンス映画ではあったが、
何故その状況に至ったかを絶え間なく
描きだす構成と結末は、
見事としか言い様がない脚本だった。
劇中の時系列に沿った
リバース・ヴァージョンもあるとの事なので、
そちらで時系列を整理させた上で、
改めて鑑賞したいと思う映画だった。
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