このレビューはネタバレを含みます
金髪でトサカ生やしたような髪型で細マッチョの男が主人公。セブンのブラピに似てる。もしくは軍鶏の主人公。
なんかめっちゃヤンチャな兄ちゃんって感じのビジュアル。喧嘩強そう(偏見)。
自分なりの面白ポイント
・健忘症の男が主人公
っていっても、なんにも覚えてないわけじゃないんだな。そうじゃなくて、新しいことを覚えられないんだ。つまり過去が無いっていうより、過去に囚われている。愛した人の死だけしか覚えていない、それ以降の新しい記憶が定着しない。つまりこの場合は…全てを忘れてしまう男というよりは、愛した人の死を忘れられずにいる男、と言った方が正しいのかもしれない。
・メモをとって忘れないようにしている、紙だけでなく身体中にも刺青として彫ることで、メモをとっている
そんな主人公の男の肉体は、全身が刺青で覆われている。見た目のインパクトがすごい。しかもその刺青は全て、過去から自分へのメッセージというね。うーん、見事にイッちゃってんなあ。なんだかまるで身体ごと過去に呪われているようだ。
・先のことは分かるが自分が何をしてきたかは分からない(時間軸が普通と逆)
だから話の進み方も時間軸に逆らっている。
・”俺にとってはメモがFACT(事実)だ”と言う男。
──記憶は思い込みであり確証では無い、記憶は間違える、記憶は記録にはなり得ない。確かにね!。では、メモと記憶、どちらが正しいのか?どちらの方が信憑性が高いのか?、実際はどちらがFACTなのか?
世の中に絶対的に正しいことなど存在し得ないのではないか?
この映画見てたらそんな気がしてきた。
メモしたって無くしたり、罠にはめられたりして間違える。記憶は人によって異なるバイアスがかかってしまうし、近未来に例え電脳化が成功して、人間の脳にメモ機能を付属できたとしても、(間違えないように全てを正しく記憶するために)脳をネットワークか外部装置に繋ぐ必要がでてくるわけだから、必然的に外からの侵入を許すことになる、それ故にこれもまた間違える可能性を0にはできない。
あー。じゃあ人間を機械化(サイボーグ化)したとしても、記憶のミスを無くすことはできないだろうな、とか考えた。
ただ純粋な機械なら間違えないだろう(彼らの世界は閉鎖的で単純だし)。
つまり、人間的なものを人間から完全に取り除くことができないかぎり、人間は間違え続けるのかもしれない。
そこまでしなきゃ、人間は間違える。
人間である限りは間違える。
・主人公の男はいつから自分が独りなのかも忘れてしまっている
でも、彼は、他の人間と違い、次にやるべきことが明確に分かっていて、しかも過去を覚えていない。つまり彼は強制的に未来に進むしかない。それは少し羨ましいと思った(大変そうだけど)。
・ラストシーン
”記憶は自分の確認のためなんだ”
確かに。記憶は当てにならない…。
では何を信じるか?
何が真実か?
分からなくなる。
だから過去は怖い。
良いことも悪いことも、過去は怖い。
…悪いことは特に。
良いことに変換してしまえば地獄だし。
”自分の外に世界はあるはずだ。
目を閉じててもそこに世界はあるはずだ”
”忘れてもきっと
やることに意味はあるはずだ”
過去も未来も確証はないのか。
未来も信じられないのか。
この映画を見る前は過去だけは唯一自分が信じられる、信じてもいい拠り所だと思っていたが…今では違う。
そうか、過去も信じられないのか。
じゃあ何を信じるのか。
信じられるものは”今”しかないってことか。
〈まとめ〉
タイトルは『メメント(過去を思う)』
だが、
実際は、今を生きるしかない男の話だな
と思った。
この映画、もっと早くに見ればよかった。