このレビューはネタバレを含みます
私は女性ですが「女の戦い」が苦手です。
例えば、韓流ドラマの「ドロドロした宮中の女同士の駆け引き」や、昼の不倫ドラマとか、好きじゃないので見たことありません。
でもそういった女性は私以外にも多いと思います。
ただ今回は、なぜかスラスラ見れてしまいました。なんていうか、女性同士のバトルなのにも関わらず、あまりドロドロしてなかったんです。むしろ乾ききってましたね。
主人公の女の人が泣くシーンがあるんですけど本気で泣いてないんですよ。まったくの嘘泣きです。
今作は、「権力闘争」の話だけど「女の戦い」というにはちょっとおかしいぞ、と思ったことについて書きます。(ネタバレあります)
①まずまずこの映画は性役割が重複している。
この時代のヨーロッパでは政治は女がやり、男は女の権力を使ってしか政治に介入できません。
女王補佐役のサラの夫も一瞬しか出てこないし、
主人公アビゲイルの旦那はセックスのことしか考えてないし、
王もわざと出さないし、
ここまで男性をコケにしている映画は初めて見ました。
みかん投げパーティってなんだよ。
その一方で
主人公アビゲイルはちゃんと(?)冒頭で男に「オカズ」にされるし、父親に売春させられます。強い力を持った男にセクハラされたりレイプされそうになります。
所謂「女らしさ」の中の「弱くて性的搾取されがち」な部分はしっかり描いているのが不思議で、なんとも言えません。
②そんな「女」であったアビゲイルが、権力闘争を通して、何か別の、ヒトでは無いケモノじみたものに変わっていきます。
自分のために他人をモノ扱いし、それで「権力闘争」に打ち勝ち、成り上がっていきます。
食べる訳でもないのに娯楽で鳥を撃ち、
旦那との初夜を「片付け」、
泣き顔の演技もしてみせるし、
子ウサギを踏みつけます。
すごく残酷ですが、ケモノと呼ぶにはあまりにも冷静です。
彼女はいったい何になったのか。
最後に勝ち残った主人公アビゲイルは、女王に髪をつかまれてモノとして消費されます。
あんなに主導権を握られる性行為は嫌がってたのにも関わらず…。
まあ最終的に、主人公は「権力闘争」に勝ち残りましたよ、
しかし、彼女は本当に「勝った」と言えるのでしょうか?
疑問を残して映画は終わります。
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最近は、なぜか、たまたま見た映画がほとんどヨルゴス・ランティモス監督作です。どういうこっちゃ!
この方の描く「人間同士の確執」は、「憎み合い」「殺し合い」というより、「行き過ぎた愛」って感じがします。勘ですけど…。しかもそんな自分を冷めた目で見ているような気がします。
本作の登場人物たちからもそれが読み取れる気がします。
アン女王と、補佐役サラは、「愛が行き過ぎている」けど、主人公アビゲイルには「全く愛がない」んです。悲しい。
最終的に、
主人公アビゲイルは、男でも女でも、ましてや人間でも、獣でもない、「よく分からない化け物」に成り果ててしまったんだと思います。
アビゲイルは常に支配されることを恐れている感じがしました。
まったく歪んでますね…。
これに比べたら韓流ドラマや不倫ドラマの愛憎劇のほうがよっぽど健全だと思いました。
でも嫌いじゃないんですよね。
むしろ主人公アビゲイルの気持ちが分かるし、分かっちゃうことがめちゃくちゃ嫌ですね!笑
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気になったら見てみるのはありだと思います!合わなかったらすぐにやめても大丈夫ですよ。