じょり

顔役のじょりのネタバレレビュー・内容・結末

顔役(1971年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

①勝新太郎が監督を続けてたら邦画の歴史は何かしら変わっていた気がする度 128%
②山崎努キレキレ度 …『マルサの女』権藤の5倍 (カッコ良すぎ)
③リアルなその筋の人々に混ざった時の、若富の違和感…0%〜-20%(マジでおかしい存在感)

過去最長のレビューで失礼します。

鑑賞後の第一声、何かとんでもないものを見た…採点不能。
諸般の事情でソフト化は不可能だそうです。フィルム上映。

『座頭市折れた杖』で勝新監督作品は鑑賞経験ありまして、監督の作風は、ストーリーは二の次でとにかく相当ヨリの画と徹底したリアルさ追求のイメージでした。初監督の本作、解説(トークショー)のバンヒロシ氏の言葉を拝借するなら本作、リアルが一周してファンタジーに感じてなりません。

ともかくOPの賭場シーンがまずもって強烈。アドリブのようなセリフの連続、目付き、手慣れた所作などから尋常ならざる殺気が漂いまくってます。
それもそのはず、解説によると、当時午前3時にお開きとなった神戸の然るべき場から撮影のため太秦撮影所へ午前8時に本物約40名をお疲れの所お連れしたそうですが(疲れを取ってもらうため良い食事を用意)、そんなこだわりからして勝新えげつない…「本当に張ってないとあんな雰囲気は出ない」は嘘じゃない。本物の刑務所内+囚人で撮影された『バタフライエフェクト』の刑務所シーンよりも遥かに殺伐としてます。

撮り方にもよりますが、役者はとにかく圧(アツ)とか存在感が桁違いで、映画は緊張と弛緩と言うけどほぼ緊張の連続。どこまでも基本リアル追求してます。映画館の主観シーンなんてあかんでしょ。個別にコメントしたらキリがないくらい名優揃いの説得力ある演技に大興奮で眼福でした。
真面目な若手刑事の前田吟だけが唯一の心休まるキャラでして、フレームインすると私は何か落ち着きましたし、勝新が可愛く見えてくる気がしないこともない…他がもっと危険な匂いするので。
もちろん他にも足指・頭皮・毛根クローズアップとかなんかも絵的には弛緩に入るんでしょうけど個性的すぎる…猫の意味は分からず分からずじまい。そういややけにトイレシーン多かったな。息のつけない、緊張を持続させるトイレ。

こちらの気を張っとかないと話の筋が分からなくなり置いてけぼりを食う(いや、意識してても省略連発で話がイマイチ入ってこない)。
そのために鑑賞中は緊張しっぱなしでもあるんですが、はっきり言って寄りすぎなカメラワークや意味が分からない部分や謎のカットインも少なくなく、娯楽作というより相当な前衛的・実験的映画だと分類されると思われます。
それでも能動的な鑑賞を可能にさせる原因は、ざっくり言うと、勝新に映画作りのセンスがあったと言わざるを得ません。リアル追求だけど主観と客観を組み合わせて芝居の面白さを随所に感じさせる手腕はフリージャズなフィーリング。

「いかつい」という表現が生ぬるい野心作。機会がありましたら、映画の可能性を肌で感じるためにもご覧頂ければと思います。
じょり

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