ジミーT

天国と地獄のジミーTのネタバレレビュー・内容・結末

天国と地獄(1963年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「悪い奴ほどよく眠る」「用心棒」「椿三十郎」に続く田中友幸×黒澤明×三船敏郎のスーパー・エンタテインメント、最強のミステリ・サスペンス映画に何かを言う言葉もありません。
ただ・・・。

予告編までがすごい!

特急列車がパァァァァン、ゴォォォォォ。
(特大文字で叩きつける)
「全世界が注目!」 
「息詰まるサスペンス!!」
「巨匠黒澤明入魂の超特作!!!」
「三船敏郎 仲代達矢!!!!」
「天国と地獄」
ジャジャーン!

というのを期待していたら・・・。
違った。

東宝マーク
「天国と地獄 予告編」
に続いていきなりラストの面会室の山崎努。
冷静なナレーションが「事件は終わった。」
「しかし被害者権藤にも、担当警部の戸倉にも、何か割り切れぬうそ寒い気持ちだけが残った。」
以下、「犯人はなぜこんな事件を起こすに至ったのか」を糸口にナレーションと画面で、映画を遡る「生きる」方式というか、「市民ケーン」方式。そして地味に「監督 黒澤明」「三船敏郎」。そういう構成になっているんです。

この予告編だと、何かムズかしい社会派ドラマという印象を与えますね。
もちろん本編にはそういう側面もあります。それにムズかしい社会派ドラマもそれはそれで面白いのですが、映画本編は観ればわかる通り、何と言っても犯人vs警察・被害者の攻防戦と緊迫感ですよ。どう見てもそうです。しかし、そこにはほとんど触れられていません。
もしかしたら、サスペンスとスペクタクルは本編を観たときのサプライズということで、あえて予告編では触れずに、ミス・ディレクションしたのでしょうか。
映画の予告編がどのように製作されるのか知らないのですが、少なくとも普通の予告編のセンスではない。もしかしたら黒澤明の直接指導があって、予告編にまで黒澤一流のハッタリを効かせたのかもしれません。

一方で、アメリカ版予告編というのがあって、こちらは私が期待した内容に近く、「これぞ予告編」でした。
この2つを見比べてみると、同じ映画とは思えませんね。

追伸
映画マニアの知人に話したところ、上記の予告編はリバイバル上映された時の予告篇らしい。いつのリバイバルかは不明です。初公開の予告編はラストシーンの山崎努バージョンと、もう一つは三船敏郎が階段を降りるシーン、ただそれだけのものということです。これは未見ですが、興味深いですね。
尚、特急列車のシーンがあるサスペンスフルな予告もあるそうです。

参考資料

「天国と地獄 予告編」
Youtube

「天国と地獄 american trailer」
ニコニコ動画

全集黒澤明 第五巻
1993年
岩波書店
ジミーT

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