イトウモ

スローターハウス5のイトウモのレビュー・感想・評価

スローターハウス5(1972年製作の映画)
4.0
思いのほか原作通りで驚く。難解な原作をあえて感覚的な演出に(ヨーロッパ的に)洗練させないぶっきらぼうな荒さ、散漫な筋さえ律儀に辿る説話の尊重というのが実にハリウッド的で、アメリカの小説をアメリカの映画監督が映像化したという素直な事実に嬉しく思う。
昨今、ヨーロッパ人がみんな英語を喋るような映画まである中、アメリカ人の眼に敵国の軍人、知らない街の田舎の住人、知らない言葉をわめく人々として映るドイツ人が生々しくて、新鮮である。空襲前の美しいはずのドレスデンが初めて登場する光景はジャングルのように凶暴。
人生の最悪の光景(ドレスデン)、最良の光景(トラファマドール星)、最期の光景はその並列的な価値が編集で一層強調され、循環的フラッシュバックの中で生命は永遠になる。永遠になることでより一層生きることを肯定しようとする原作の意図とどんどん親和していくラスト、多幸感、清々しい