シミステツ

グロリアのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

グロリア(1980年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

組織に狙われた一家の息子・フィルを預かり逃亡劇を繰り広げるグロリア。『レオン』に影響を与えたであろう原型のような、いい意味でカサヴェテスっぽくないアクション映画。

「夢を見てると思うのよ」

殺した奴らは一体何者か、グロリアは何者かという謎が少しずつ浮き彫りになっていく。フィル一家を殺したのはグロリアの友人ら。グロリアは犯罪歴もある。一味に遭遇したグロリアは彼らを撃ち殺してタクシーで逃亡。狙いは手帳と子どもにある模様。

「ママじゃない。ママは美人だった」みたいな生意気さや「僕を愛してる?」「女は年をとると強くなってビクビクせずに済むのに今はビクついてるでしょ」という甘えるところもあるけど、ときおりグロリアを見透かす大人びたところが同居しているフィルも人物描写として巧み。

「あんたの母親になるって話まだ断る?」
「なっても構わないよ」
「なぜなりたいの?」
「堅気の暮らしもいいだろ」
「あんたは僕のママでパパで家族だ それに親友だね 恋人でもある」
「家族がいいね」

意を決して組織のボスに会いに行くグロリア。ホテルでひたすらに待つフィル。

「好きだよ 死ぬほど好き」

子どもを差し出す代わりに殺してと請うグロリアは終始かっこよかった。留守番していたフィルがホテルを飛び出して両親の墓のあるピッツバーグへ向かうと最後には無事にグロリアと感動の再会。満面の笑みで駆け寄るスローモーションは一瞬フラグかと思ったけど死ななくて良かった。血のつながりを超えた家族の愛の物語。

猫を大事にしているところとか失敗した目玉焼きをフライパンごと捨てるシーンとかグロリアの人間らしいところも描写していてよかった。劇伴も独特の哀愁や情緒を誘う。カサヴェテス映画にはコーラがよく出てくる気がする。