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グロリアのakrutmのレビュー・感想・評価

グロリア(1980年製作の映画)
3.2
先々月に鬼籍に入ったジーナ・ローランズが、友人の息子を連れてギャングの追手から逃げる中年女性グロリアを演じた、ジョン・カサヴェテス監督による犯罪ドラマ映画。

ジョン・カサヴェテス監督にしては珍しいコロンビア・ピクチャーズによるハリウッド映画で、興行的に成功するとともに、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞するなど評価も高い作品。でも、本作の何がそれほど評価を受けたのかが、私にはわからなかった。もちろん、ジーナ・ローランズの演技が良いのはわかる。どこにでもいそうな平凡なおばちゃんの風貌をした彼女が、ギャング相手に啖呵を切って銃をぶっ放す姿に、なんとも言えない格好良さを感じてしまう。でも、それ以外に見るべきところは何もない。

まずは、逃亡劇として失敗に終わっているのが難点。二人がニューヨークから逃げようとせずに留まっているのでは、切迫感が全然感じられない。実は逃げる必要もないのだが、そのことがストーリーに上手く活かされていない。結局、逃亡ごっこのような逃亡を見せられるだけでは退屈なのである。また、グロリアと少年の関係性も最初から最後までフラットなままで、二人に感情移入しようがない。それが狙いなのかもしれないが、そうだとするとラストは変えるべきだし、一方このラストにするのであれば関係性を動かすべきである。時々見せる大人びた表情や仕草は上手いけれど、少年を演じた子役の演技が総じて良くなかったせいもあるだろう。

本作はもともとジョン・カサヴェテスが監督する予定ではなく、コロンビアに雇われてお金のために脚本を書いただけである。しかもバーバラ・ストライサンドのために書いた脚本だったが、彼女が出演を拒否したために、ジーナ・ローランズが演じることになり、それならばカサヴェテスが監督するということになったらしい。でも、ジョン・カサヴェテスは本作をずっと気に入らないままだったそうである。やっぱり、ジョン・カサヴェテスは自分が好きなような撮らないと駄目なのだろうし、ジーナ・ローランズは壊れた演技で最も輝けるということだろう。
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