三樹夫

ミストの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

ミスト(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

街が霧に包まれ、どうやら霧の中にはとんでもない怪物がいるらしい。外に出ることが出来ずスーパーに籠城するが、人間もまた怪物なのであった。
胸糞ラストを除いてもダラボンの本性が出た悪趣味オンパレード映画となっており、怪物がとにかくキモい。怪物に襲われても死に方がキモい。やたらゲロゲログチョグチョで、『ブロブ/宇宙からの不明物体 』や『ザ・フライ2 二世誕生』の脚本を書いている時のダラボンが出ている映画となっている。

この映画には最高のエンターテイナーがおり、それは勿論ミストのババアことミセス・カーモディだ。地獄絵図みたいな状況の中で唯一エクスタシーが到来したのが彼女だ。おそらく普段からハリケーンなどの自然災害が起きるたびに神がどうだの言ってずっと周りから白い目で見られて無視されていたのだろう。劇中でも友達はいない的なことを言っていた。しかし霧に包まれた極限的な状況下において、なぜか崇拝と畏怖の対象として持ち上げられ、自分の言うことを民が尊敬を持って集中して聴き始める。さぞかし気持ちのいいことだろう。彼女の何一つ脚光が当たらなかった人生において唯一の輝ける瞬間だった。ただしミストのババアは思いっきり俗物で、承認欲求と他者への支配欲がダダ洩れしておりアマンダへの敵意はただの私怨でしかない。急に力を持って好き勝手に醜く権力を振るう狂人だ。蟲が刺さなかったのはただの偶然でしかないが、彼女の中では自分は神に選ばれし者故に刺されなかったという解釈となり、自身の醜い振る舞いへの手前勝手な後押しとなり狂気に拍車がかかることとなる。
こいつマジで死なねぇかなと思っていたら、作中トップクラスの有能の副店長が土手っ腹と脳天をブチ抜く最高のシーンが訪れる。海外でも拍手喝采だったらしい。やっぱ誰でもこいつ早く死なんかなと思うよね。ミストのババア死亡の正の感情で、胸糞ラストの負の感情は差し引きゼロにならない?
ミストのババアは観ている者の感情を上げ下げしまくりのキャラで、この映画を一番引っ張っているキャラだ。再視聴時にはミストのババア目当てで観ている。ネトフリのサムネもミストのババアだった。また薬局から戻ってきたらジムが宗教墜ちしてるのも笑った。カットが変わってジムが宗教グループに参加しているとかコント演出やん。ミストのババアグループは最高のエンターテイナー集団で存分に楽しませてもらった。

この映画のラストは胸糞なのは否定できないだろう。ただ胸糞ラストでも胸糞ラスト肯定派と否定派に分かれる。私は肯定派だ。ダラボンの意図としては、もう少し希望を持って心中をしなければ皆助かったので、希望を捨てるなということが言いたかったみたい。
今の若者は映画を観て予期せず感情を動かされるのがストレスだからあえてネタバレ状態で観るみたいな記事を最近読んだ。そのことに関して、10年ぐらい前はオタク界隈では最近のオタクは鬱展開に耐えられないみたいなことを言われていたことを思い出す(今でも言われているのかもしれないけど)。そういう人もいるだろうが全員がそうじゃないだろと当り前の感想しか出てこないが、鬱展開胸糞展開に関しては有りか無しかの0か1かみたいになりがちよね。個人的にはキャラクターを不自然なまでに動かしてみたいな負のご都合主義になっていなければ鬱展開胸糞展開でもOKかな。『狼たちの午後』のラストとかそらそうなるよねとしか思わんし、そういう展開や帰結に至るまでが別に無理矢理でなければいい。
この映画のラストはそうなるのもしょうがないというので肯定している。スーパーにずっといればとか、もうちょっと希望を持って車の中で粘っていればとか胸糞ラストを避けられるルートはあったが、それもすべて後になって分かったことでしかなく、しょうがないのではと思っている。外に出て怪物に殺された人はたくさんいるため、序盤にスーパーから出たおばちゃんは偶然助かっただけだろう。
なぜこんなにも嫌な感じがするのかは、主人公が選択をことごとく間違えまくったからのように思う。薬局に行ったのも多数の犠牲を出してしまったし、スーパーにずっといればとか心中しなければの選択もことごとく外しておりいいところのない主人公だったが、ただそれも後になって分かることであり、単純に主人公のやらかしで片付けられない。

この映画はドラゴンボールセル編並みに戦犯が多数おり、映画の戦犯ウォッチャーにはたまらない。一番の戦犯は怪物を召喚した軍だろう。主要戦犯人物としては、選択を間違えまくった主人公、ミストのババア、怪物なんかいない派のおっさん、そして脳筋バカのジムだろうか。ジムの戦犯っぷりは人物描写が細かくて良く、学歴コンプから対抗意識燃やしてマッチョ主義を発露させ活躍することで男らしさを見せようとし、忠告を無視してシャッター開けた途端触手に店員が襲われ自分は身動き一つとれず。またもや変に活躍しようとしてライトを全部つけたため蟲がスーパーに寄ってくる。最終的に宗教墜ちと無能ムーブかましまくっていて楽しませてもらった。
逆に有能キャラは副店長、元教師のおばちゃんぐらいか。教師のおねーさんは人間の善性とか言ってるが、宗教グループ内のリンチ殺人とかの実例を知らんのかと思いこそすれ戦犯まではいかないかな。『無限のリヴァイアス』でも宗教が一番ヤバかったし、極限状況で宗教唱える奴は気を付けないといけない。
三樹夫

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