ユーライ

ゴジラ ミニラ ガバラ オール怪獣大進撃のユーライのレビュー・感想・評価

5.0
初代『ゴジラ』というのは私からしてみれば名作、伝説を超えてほとんど神話の域にある。それを作った監督が、戦争や核の脅威から遥か遠いところまで行ってしまった毀誉褒貶含む作品群を量産した後、メイン・ターゲットであるガキンチョに向けてがっぷり四つ、目を逸らさず真摯なメッセージを投げかけたことにまず死ぬほど感動する。ここに登場する一郎少年は、学校ではいじめられ居場所がなく、家に帰れば自室に籠って怪獣と戯れる妄想に耽る。後の根暗陰キャチー牛である。リアルにいる唯一の友達は、気のいい天本英世おじさんだけ。リメイクされたら美人のお姉さんになるでしょうな。よく夢オチであることを揶揄されるがとんでもない。「現実に帰れ」といったような陳腐なおためごかしは一切無い。フィクションから得た生きる力を使って、現実をたくましくサバイブしていけ。調子に乗ってるいじめっ子には反撃してやれ!出来心の悪戯は親に責任取ってもらえ。大丈夫まだ子供なんだから。これはもう、はっきり言って後出の富野や駿や庵野やましてやザキヤマよりも、本多猪四郎の方がどう考えてもエラいのだ。巷に溢れかえっている「辛かったら逃げてもいい」だとか「そのままの君でいい」みたいな処世術より実用的でプリミティブな生きる術がここでは描かれているぜ。フィクション論として希有の傑作。シリーズの中で唯一怪獣が出現しない=我々の生きる世界と完全に地続きになっているせいか、根底に漂うそこはかとない寂寥感もたまらない。怪獣は夢の中にしかいない……が!
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