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ストレンジャー・ザン・パラダイスのkouのレビュー・感想・評価

4.0
《過度でない切なさ》
ジム・ジャームッシュ監督作品。やはり流れる空気がとても不思議で、監督の個性が十分に出ている作品だと思う。ワンシーンワンカット、そして各場面が暗転して次の場面へ移っていく。とてもクールで、落ち着いた印象がある作品だった。

ジム・ジャームッシュという監督は、それまでは全く知らない者同士、そんな人々の何気ない出会いを描いている事が多い。今作でも、ニューヨークに住むウィリー(ジョン・ルーリー)の元に、従妹のエヴァ(エスター・バリント)が来ることから話が始まる。2人は初めはすれ違うが、日が経つにつれ打ち解けていくのだ。

しかし、それは他の映画にあるような過度な友情や愛ではなく、あくまで薄っすらと、そして僅かに心が通い始める。そして、すれ違うように別れが来るのだ。それは哀愁のこもった、切ない演出は一切しない。それでもこの映画を見て、どこか悲しく、そして愛おしくなるのは、やはりジム・ジャームッシュ監督作品らしい後味だといえるだろう。ファッション、場面の切り取り方、それぞれにセンスを感じる映画だった。
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