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ストレンジャー・ザン・パラダイスのarchのレビュー・感想・評価

4.3
いやー好きだ。何もなさないその虚無感。しかしながらその余韻は観る者にはすごい甘美。

ジム・ジャームッシュ監督の2作品目。前作と違うのは登場人物の量。前回は常に一体一の会話劇であったが、今回は3人だ。そしてこれはしっかりコメディーになっている。
また形としては3幕で構成されているのも前回はなかった。

ストレンジャー、その意味は他人、余所者、今回は「初めての場所に来た者」という意味合いでの使用かなと思う。
彼らは色々あって、フロリダに向かう。そこは題の示す「パラダイス」だ。でもこれはコメディーだから簡単には進まない。
フロリダに着いたはいいが、ほとんどが部屋の中でのシーンだ。海辺を歩いたりもするが、ドッグランでスった彼らはもうバカンス所ではない。

思えば、この作品は最初から部屋でのシーンばかりだ。エヴァがニューヨークの部屋に泊まりに来る1部だが、ウィリーにとってのその部屋は"パラダイス"であった。また、2部でクリーヴランドにウィリーとエディーが行くが、彼らはバカンス気分でエヴァの元に向かう。しかし、やることは部屋でカードやったり、映画を見たりだ。エディーの発言「新しい所に来たのに何もかも同じに見える」これが全てを物語っている。
一貫してこの作品は余所者が初めての場所"パラダイス"に行くが結局日常とさして変わらないものでしかなかった、というただそれだけの話ですが、実に面白かった。

コーヒー、カード、会話の余韻、無意義で堪らない会話と映画世界の空間が実にデッドパン映画に相応しかった。そこにジムジャームッシュの真髄があるのかなと思った次第だ。
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