フェミ研ゼミ

欲望の翼のフェミ研ゼミのレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
4.0
久しぶりに映画を観た。
本当に久しぶりだ。
しかも配信ではなくDVDのディスクをプレイヤーに読み込ませて観た。
この行為すらもなんだか懐かしくて
夜中にシクシクと泣けてきた。
10年も遡らない少し前までは、
これをしないと映画が見れなかったのになと人生を振り返っていた。
人の生活というのはあっという間に変わっていくな〜短いしあっという間だな。
ワタシもすぐ死ぬのか〜
まだ映画撮ってないのにな〜
と自分がいつか撮るかもしれない(?)映画作品に想いを馳せていた。

私は映画を撮っていた頃の王家衛の感性を重力のように信頼している。
観ている時にすらこの映画が一生続きますようにと思うし観終わったあとは、
いつもジットリした泣きたいような感情になる。でも素直に泣けるほどの分かりやすい事件は起きない。こんな時間にこんな湿った気持ちで起きてるの世界に私だけなのではと過剰に孤独を感じる。
だから仕方なく24時間営業の真夜中の西友に無意味に行きたくなる。
そんて、あぁ私以外の人が生きてるな〜と人の気配を感じて安心する。


60年前の香港の若者たちを描いたこの映画は、ものすごくみんな孤独で自由だった。この頃の若者たちもきっと夜な夜な西友に行きたいよな気持ちだったんだろうな。
(そんな安っぽい例えでいいのかとはおもうけど)
スマホが無かった時代、一体みんな何してた?
って最近よく考えている。
スマホがあるから孤独は薄まるのに、
私は相変わらず夜な夜なスーパーによく人の気配を感じに行くし、本当に連絡したい相手なんて多分3人くらいしかいない。
それでもスマホの容量は250GBもあるから仕方なくよく知りもしない人の連絡先や猫の写真なんかで容量を誤魔化している。
中身なんて本当に何にもない。



でもスマホがあったらあんなに切ない、
公衆電話の音を聞かずに済んだのだろうと思うと、やるせ無くて泣けてくる。

60年の時を経て悲しくなっている女がここにいる。

スマホやSNSで人間関係をストックすることはできないんだと改めて気づく。
スマホがないその頃の彼らの方がよっぽど
誰かのことを想い行動していて羨ましいと想ってしまった。



ここ一か月本当に体調が悪いし、
精神的も不安点だったので、
そんな今のワタシにはこの物語がすごくすごく浸透した。
久しぶりにみた映画がこれでよかった。
すごく歳を取ったんだと感じたけれど。
良かったな。
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