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恋の罪のmasaのレビュー・感想・評価

恋の罪(2011年製作の映画)
3.8
人間堕ちていくのはほんとあっという間である。気付いた時にはもうどん底の底辺にいる。そこからがなかなか蘇生できない。少し這い上がってもまた、同じ事を繰り返して堕落してしまう。
人間はほんとに悲しい生き物である。

実際に起きた東電OL殺人事件がベース。エリートの裏の顔が娼婦という話。

女性刑事和子役の水野美紀は綺麗で素敵な女優さんですが正直キャスティグしないほうが、よかったかもしれない。一人浮いちゃってるような。
浮気相手のアンジャシュの児嶋、和子をまじめに脅迫するが、児嶋なのでなんとなく笑ってしまう。

この作品は大学の助教授の美津子(富樫真)と人気小説家の妻いずみ(神楽坂恵)のやりとりがとてつもなく甘美だ。

いづみが鏡の前で全裸でポージングして『いらっしゃいませ、いかがですか、試食してみませんか、美味しいですよ』とパートしてるスーパーのソーセージの試食販売の売り文句を連呼してるシーンは官能的だった。たまらない。

『言葉なんか覚えるんじゃなかった』
美津子が大学の講義で取り上げているこの詩が、わからないようでわかったような気持ちになった。
以下、長いが全文。長くてすみません。

言葉なんて覚えるんじゃなかった。
言葉のない世界。
意味が意味にならない世界に生きてたらどんなによかったか。

あなたが意味のない言葉に復讐されてもそいつは僕とは無関係だ。
君が静かな意味に血を流したところでそいつも無関係だ。

あなたのやさしい眼のなかにある涙。
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦。
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったらぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう。

あなたの涙に果実の核ほどの意味があるか。
きみの一滴の血に この世界の夕暮れのふるえるような夕焼けのひびきがあるか。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった。
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげでぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる。
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる。
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