ユースケ

アルゴのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

アルゴ(2012年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

占拠された在イラン米国大使館から脱出した6名の大使館員をインチキ映画【アルゴ】をでっち上げて撮影クルーとして出国させよ。
1979年11月4日に起こった在イラン米国大使館人質事件から18年間アメリカ政府が封印してきたCIAとカナダ政府による共同作戦・カナダの策謀を、ボンクラそうに見えて実は大学で中東情勢を専攻していたベン・アフレックが1970年代のポリティカル・サスペンスの風味を効かせて映画化。
監督三作目してこの完成度。もうベニファーなんて呼ばせない。

とにかく、オープニングに登場するワーナー・ブラザースの前身ワーナー・コミニュケーションズのロゴをはじめ、16ミリフィルムで撮られた粒子の粗い映像や当時のニュース映像など、事件当時の空気感をリアルに再現しようとするベン・アフレックのこだわりに注目。エンドロールで流れる事件の当事者と俳優の比較映像を見れば納得です。

みどころは、間に合うか間に合わないか、バレるかバレないか、間一髪が連続する空港でのシーン!
大統領の承認、航空券の手配、ハリウッドの事務所への確認の電話、シュレッダーにかけられた大使館員の写真付きの名簿の復元など、結果のわかっている実録もののはずなのに手に汗握る緊張感はリアリティの追求の賜物です!

更に、【猿の惑星】でアカデミー名誉賞を受賞した特殊メイクの第一人者のジョン・チェンバースを演じたジョン・グッドマンや大物プロデューサーのレスター・シーゲルを演じたアラン・アーキンに負けない存在感を見せた人質奪還のプロフェッショナルのトニー・メンデスを演じたベン・アフレックの演技も素晴らしい。

イランの歴史やイランの政治に対するアメリカの関与など、在イラン米国大使館人質事件に至る経緯を知ってからだとより楽しめる作品だと思います。

【アルゴ】の原作であるロジャー・ゼラズニイの【光の王】で、ヒンドゥー教の神を名乗る超能力者の支配に対して主人公が仏教を武器に戦いを挑むストーリーが、アメリカの搾取に対して最高指導者ルーホッラー・ホメイニー師がイスラム教を武器に起こしたイラン革命と重なってグッときました。

ちなみに、【光の王】のコンセプトアートを描いたのはジョー・サイモンと共にキャプテン・アメリカを生み出したザ・キングの異名を取るジャック・カービー。本作ではマイケル・パークスが演じております。