ほわいと

SHAME シェイムのほわいとのレビュー・感想・評価

SHAME シェイム(2011年製作の映画)
3.8
難しい作品。「性依存症を持つ男性が主人公」ということはだけ知っていた。仮にそれを知らずに観ていたとしたら…全く理解できなかったかもしれない。
体感としてはそれほど面白さを感じたとは言い難いけれど、個人的にこの作品が持つ空気感は好みだし、映像、演出や演技によるところの評価がかなり大きい。

オープニングから、映像がとても美しい。タイトルインの形が完璧。主人公の服装もそうだけれど、寒色が多く用いられていて、ニューヨークという街・作品の冷たい空気を上手く作り出していた。
長回しが多く、全てをさらけ出したであろうマイケル・ファスベンダーの演技力の高さを極限まで見せつけられる。主人公の妹役のキャリー・マリガンも素晴らしい、それまでのやんわりしたイメージと違って、とにかく言葉遣いが悪くてガサツな女性を演じている。
兄妹が再開するChicの"I Want Your Love"の使用している長回しのシーンが今作で最もキャッチーかもしれない。鏡越しのカットが良い!

ほとんど淡々と進められ、ストーリーは掴みにくく、ある程度予想しながら見ていくと見やすい。
明確に物事が語られることはないので、劇中で提示されるものから予想するしかないし、過去に何があったのか、なぜあのような行動をしたのかは全て憶測でしか語れないんだけど、自分は「近親相姦」を扱っているように感じた。他のレビューを見ると「性的虐待」も多く挙げている人がいて、この2つのうちどちらか、もしくは両方の要因が考えられるし、合点いく。別の要因を考えろと言われると難しいが、その可能性も十分にある。

性依存症についての知識が全くないので、調べていると下記の記述を見つけた。
「過去20年以上のセックス依存症患者の研究から、高い確率で幼少時のトラウマ、性的虐待、健康的な人間関係を作ることの困難やリアルな性的関係への困難が見られる」「逃避や治療の代わりに、セックスを用いる」。
おそらく過去に何か辛い出来事があり、主人公の性依存症と妹の男性への依存体質もそれが原因であろうことが見えてくる。憶測の範囲内で。

劇中でキャリー・マリガンが"New Yorke New Yorke"という曲を歌うシーンがおよそ5分にもわたり、ほぼアップだけが映され続ける。最初は長くて退屈に感じたけれど、二度目に観た時に途中映される主人公の反応、涙を流す姿から色んなことが想像できるし、心に沁みてきた。歌詞の内容から、主人公の出自や性格がオーバーラップしていると考えるとこのシーンはとても重要に思えてくる。
主人公にとって性行為はどういった意味を持つのか、おそらく意味はない。快楽のためでもなさそうだし、楽しくもなさそう、むしろ悲しく辛い印象を受ける。ラストシーンは何を意味するのか、自分には性依存症の辛さを感じさせるものだった。

人に勧めにくい作品だけど、スティーヴ・マックイーンの最新作「それでも夜は明ける」の予習に良いかもしれない。今のところ自分にはあの映画を劇場で観るメンタルはない(笑)