ザリくん

千年女優のザリくんのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
5.0
配信に来てくれるのを千年待った。オールタイムベスト級に好き。

女優として走り続ける千代子。恋や夢だの形のない素敵な物に突き動かされている人は美しい。しかしそれは呪いであり、加えて呪い自体に恋をしているもんだから永劫解けることもない。そんな歪んだ側面含めて彼女(または我々)の人生を肯定するドキュメンタリー。
真っ直ぐ過ぎる様を長き時間傍で見ていると狂言回しの社長のようについつい見惚れてしまう。

ロマンチックな初恋が年季が入り、純粋を狂気として描くあたり、完全にタイタニックと逆の展開の純愛映画。半世紀以上続く初恋は狂気。ずっとタイタニックのラストシーン(彼の物を捨てる)を見た時の感情を裏返した感覚が続く。タイタニック、(ミーハーなので…)大好きなんです…

登場人物の心情やストーリーはそれ程複雑ではないが、映像物語を映像物語その物を使って進める手法をエモーショナルに成立させているのが本当に大好き。場面がシームレス・飛躍的に繋がれていく今敏の手数の多さが天才的なのは言うまでもない。アニメ的快楽で形作られたジャパリメーションの極地。

舞台となった昔の日本映画をもっと知りたくなる。レトロな所に平沢進のサウンドが流れるの面白い。レトロなのに前衛的、今敏と平沢進が仲良いのが何となく分かる気がするような。

昭和日本映画史、日本赤軍、反乱分子を抑え込む国家権力、具体的な時代背景を描きながらもそれらが全て普遍的な人生物語論に繋がってくる。周辺知識が乏しがろうが響いてくる。黒澤明とか見なきゃ…

最後に内容の総括らしきをキッパリ言ってしまって潔く終幕するの爽やか。「だって私、」(しかしここは違和感もある、言わなくても良いからだ、後日考察するつもり)
劇中の全ては女優の生み出した初恋のありもしない虚構が入り交じり、同時に「演技をする仕事」を現実でし続け生きた。それを一切後悔せず千代子は自分を非常に強く肯定する。恋・夢、全てあってないもので演技で映像として分かるところに持ってくる。引いては現実は虚構であり、虚構は現実。どちらも愛して、フィクションを楽しみながらリアルでも頑張って行こう〜

つまりドキュメンタリーを撮れば良いんだ! 社長のように。

感想むずかし〜
ザリくん

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