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千年女優のncccoのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.3
今敏の作品の中でダントツ一番に好きな作品。

大女優藤原千代子の半生を描く華やかなアニメーション。
千代子の昔語りと同時に思い出の世界に引きずり込まれ、虚構の演劇の世界と過去の回想が息つぐ間もなく切り替わり走馬灯のように巡っていく圧巻のストーリー展開。
遠く戦国の御代からいつとも知れない未来の宇宙まで、千年の時を超えて加速していく恋心はいつか狂気を増して彼女そのものを支配し、導いてゆく。

追いかけているものがたとえ虚構であったとしても、何かを追いかけ続けることそのものが生きる力となり糧になる、この恋の力があったからこそ千代子は女優として大成できたのでしょう。
自分の心に蝕む虚構に気づきそうになるたび、演劇での役どころに自らを重ねて立て直し生きてきた千代子も、老いだけには向き合わざるを得なかった。彼女が手にした「魔法のカギ」は、恋する気持ちを原動力に付き進む絶対的な「自信」を彼女にもたらすものだったのかもしれません。だから、ラストで鍵を取り戻した彼女は再びその想いに身を焦がして旅立っていくことができた。

「だって、毎日どんどん好きになっていくんだもの!」このセリフ、たまらんですね。今敏のこの女性の本質を見抜く眼力はどこから来るものなのか、、
身をつまされること千万甚だしく、それでも目的を定めて生きることの大いなる意義を思い起こさせてくれます。

90分とは信じられないような濃密さで、千代子と駆け巡る今昔恋物語。
ラストまでひたすらに駆け抜けていく疾走感と、美しいアニメーションに惚れ惚れ。今敏の描く女性は本当に、うっとりするほど美しい表情をする。日本に生まれこのアニメーションを味わうことができる幸せを噛みしめさせてくれる素晴らしい作品。
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