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太鼓のrupertのネタバレレビュー・内容・結末

太鼓(1938年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

「カラナグ」でデビューしたインド出身の少年スター、サブーの主演第2回作で、大英帝国の植民地であった時代のインドを舞台にした活劇映画。

監督はゾルタン・コルダで、英国映画の大プロデューサーである兄アレクサンダー・コルダが主宰するロンドン・フィルムの製作作品なので、ハリウッド映画並みのスケールの大きさが感じられるのと、(鑑賞したDVDの発色はあまり良いものではありませんが)テクニカラーで撮影されて華やかさがプラスされているのが魅力となっています。

インドに駐屯している英国軍と北西の辺境地帯を支配する部族との衝突が描かれていて、「ベンガルの槍騎兵」「進め龍騎兵」「ガンガ・ディン」といったハリウッド製のインド活劇と同様、英国側に正義があり、英軍に刃向かってくる者たちは悪者という構図に基づいて作られているので、どうしても今観ると偏った印象を受けてしまう部分はあるものの、エキストラを大勢使っての戦闘シーンは観ごたえがありました。

サブーが演じている辺境州の都トコットの王子アジムは、辺境に駐屯する英軍のカラザース大尉(ロジャー・リヴシー)とその妻(ヴァレリー・ホブソン)や鼓笛隊の少年ビル(デズモンド・テスター)と友好関係にあり、アジムの叔父にあたる王弟グールがクーデターを起こして王を殺し権力を手にすると、アジムも命を狙われることになりますが、カラザース夫妻の宿舎にたどり着いて難を逃れます。
そして、野心家のグールがカラザースが所属する駐屯軍の虐殺を計画していることを知ると、グールが虐殺を実行すれば、英軍の本隊が乗り出してきてグールは退治されることになるので、それを待っていても良いのに、アジム王子はカラザースらに対する友情から、彼らに虐殺の危機を知らせるために奔走するといった話の流れになっています。

インド人の王子が植民地支配をしている英国人に何ら反感を抱くことなく、彼らの保護下に置かれるのを良しとする姿勢を感じてしまうのがやはり引っ掛かる点で、のちにサブーが出演する代表作「バグダッドの盗賊」や、ハリウッドでの「アラビアン・ナイト」のような虚構の世界で繰り広げられるアラビアンナイト活劇ほどには、無邪気に楽しめませんでした。

それでも、サブーの土着の野性味がある王子役はとても様になっていて、ハリウッドの子役スターのように人工的に作られた感じがしないのはいいですね。

また、グールを演じる名優レイモンド・マッセイは、コルダの製作作品では「無敵艦隊」のスペイン王と同様、敵役としての存在感がありました。

冒険映画を収録したパブリック・ドメインの国内盤DVDで鑑賞。
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