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CUTのjnkのレビュー・感想・評価

CUT(2011年製作の映画)
4.5
映画の中で映画愛を語るというだけでうんざりするのにシネコンでかかってる商業映画はクソだという雑な決めつけまでする近くにいたらあんまり話したくないタイプの映画マニアが主人公。
こんなに映画好きなやつを痛く描いた映画他にあんのかってぐらいキモくてうざい。
この主人公もこの映画を見てる映画好きな観客も一切甘やかさないのが映画への偏愛を語るストーリーにばっちりはまる。
意味不明なシネフィル殴られ屋の設定もクライマックスで一気にリアルになる。

クライマックスで彼がパンチを耐えれる理屈が本当に素晴らしくて、痛い映画オタクを散々見せつけられた気持ちが一気に晴れた。
恐ろしくストレートに映画最高を謳いあげる100発の演出は痺れたし、そのシーン自体は全く新しいことをやってるからただの昔はよかった話にはならない。

見返してみるとあのチョイスが結構おもしろくて、北野武はHANA-BIで大島渚は少年、ブニュエルはビリディアナ、フリッツラングはM 、コッポラはカンバセーションと中々渋い。
散々叫んでる「映画は売春じゃない」の意味は作る側と見る側の利害が一致しすぎてるというか、ただ見たいものだけを見る観客を満足させるためだけに作られた映画だと解釈したけど、あそこで出てくる映画達はどれも個人的な理由で作られたものが多い気がした。
こういうのが見たいんやろって映画は自分も見たけりゃいいけど、作られた理由がさっぱりわからない映画を見ると本当に虚しくなる。
そういう意味であの映画達は個性めっちゃ強いのに人と関わろうとするものばかりだった。
エンタメと芸術を対照っぽく扱ってたけど、自分が見た範囲だと普通に両立してる作品ばっかだと思うし、あのセリフは本来大衆向けで見世物な映画の復活を願ってのことかな。

見たことある映画のタイトルが出てくるとあー知ってるって楽しみ方もあるけど、とにかく映像の迫力と映画の歴史の畳み掛けがやばい。
こんな素晴らしい映画達のおかげでなんとか立って生きてるってのはあの主人公だけじゃないはず。
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