おまつりちゃん

マルチプル・マニアックスのおまつりちゃんのレビュー・感想・評価

マルチプル・マニアックス(1970年製作の映画)
3.5
予告で見るような、変態ショーの一座が中心となっている印象というよりは、それはほんの導入であって、ディヴァインという狂人が完全に主軸、その挙動や思考と、非常識のオンパレードをメドレーの様に楽しむ映画でした。

膨れ上がっていく狂気を内包し続け、いくところまでいってしまうディヴァインだけど、彼女がただ狂気的な喜びや快楽のみで構成されているという演出ではなく、ところどころに普通の人間と同じ様な感情を持っているのが垣間見えるのが面白かった。

ディヴァインはジョンウォーターズ作品のミューズであるドラァグクイーンなのですが、作中では娘持ちのノンケ女性として登場。
とても美しく醜く、恐ろしく悍ましい。
そのオーラの全てを纏めると、まさに"崇高(ディヴァイン)"(作中では"神聖"と訳される)だと思います。
彼女の貫禄や佇まいはそれらを全て醸し出していて、その神聖の中に微かに現れる人間性と、その微かな人間性すらどんどん消失していく様は観ていて楽しかったです。

同性愛や一般人に理解され難いフェチズムや、ぶっ飛んでいるとされそうな思考回路、そういうものを差別的に見る人々が登場する一方、そういったものを差別している作品ではなく、むしろそこに愛や興味があると感じる作品でした。

映画として面白いかどうかを測るには、どういったものさしを出してくるかで随分変わってしまいそうなのだけれど、「何を見せられているんだ…」と中弛みするシーンが多々あることも含め、私にとっては面白い映画でした。

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