おまつりちゃん

永遠に僕のもののおまつりちゃんのレビュー・感想・評価

永遠に僕のもの(2018年製作の映画)
4.7
とても好き。

懸命に生きる、純粋で直向きで悲しい怪物のような生き物の物語だと感じました。
動物たちや虫たち、植物たちの様に、ただ生まれた自分を懸命に生きている。

邦題では「永遠に僕のもの」となっていますが原題は「El Ángel」(ようは「天使」)、
洋画が日本に来た際によく起こってしまう現象ですけれど、この作品も例に漏れず、邦題よりも原題の方がらしく感じました。

アルゼンチンに実在した天使の様な容貌のシリアルキラーの実話にインスパイアされて作られたそうなんだけど、単純にその要素だけを面白おかしく衝撃的に描きたいだけならばもっとドギツい描写を入れたり、ショッキングな映画にすることもできただろうに、飽くまで人間を丁寧に描くという意思を感じて、私としてはそこがこの映画の素晴らしいところだと思いました。

ただのニュースや伝記では「心が無い狂人」のように感じる人物も、同じように生まれて息してごはん食べて生きてきた人間で、実は様々な心や性質を内包していて、そう単純な話ではない。
「忘れ物をしやすい」とか「虫が生理的に無理」とか「怒りっぽい」とか、そういう当たり前に人が持っている性質みたいなものって、無意識のうちに自分の思考回路や行動に影響を及ぼしてるのだろうけど、そういったものと同じように、狂人たちにはコントロールし得ない性質が自分の中にあって、純粋であればあるほどその性質に自分が蝕まれてゆくのだと思います。

そういった人間性の描写や、家族や友人との関係の移り変わりの描き方はもちろんのこと、単純にファッションや絵面のカラーなど、美術面も目に気持ちよく、楽しかったです。
とても素敵な映画でした。