さわだにわか

マルチプル・マニアックスのさわだにわかのレビュー・感想・評価

マルチプル・マニアックス(1970年製作の映画)
3.8
ディヴァインがザリガニに犯される映画ということだけ知っていてどんなシチュエーションなんだそれはと思っていたが実際に観てもどんなシチュエーションなのかわからない!どんなシチュエーションなんだあれは!あとザリガニじゃなくてロブスターでした。

まぁしかし、今の目で見れば牧歌的というか、なんて真っ当なリベラルの映画なんだと変な方向に感動してしまう。出てくる人間が全員クズ。マジョリティもマイノリティも関係なく全員がクズ。当たり前だよ人間だもの。でもこれを貫くのは実はとても難しい。当時もアングラだから出来ただろう表現とはいえ、今のアメリカ映画ならアングラでもできないんじゃないだろうか。なんの言い訳もなくマイノリティをクズとして描けば猛烈な抗議は避けられないように思う。

誰もを平等にクズとして描くこと。誰一人として特別扱いしないこと。生臭くて欲望まみれの生きたリアルな人間として描くこと。その徹底した下から目線が露悪的に写らない絶妙なチープ感と、合間合間に見えるキリスト教批判&アメリカ社会批判の確かさがウォーターズのセンスと知性。たとえ見世物的に消費されていただけかもしれないとしても、こんな映画が映画館で上映出来ていた時代もアメリカにあったのだと思うと、ちょっとだけ感傷的な気分になってしまうのだった。
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