このレビューはネタバレを含みます
ナチス、ユダヤ人収容所の軍人の父のもとに生まれたブルーノと、有刺鉄線越しに出会った縞模様のパジャマの少年・シュムールとが心を通わせていく物語。
どんなに距離が近くても住む世界の違うこと。内と外。当たり前が当たり前ではない世界の存在。人種でラベリングすることの無意味さと暴力性、分断、洗脳。
ユダヤ人の召使いに怪我を治療してもらったり、やさしさに触れるブルーノ。
生まれた環境、政治、思想や宗教などで洗脳にも近い価値観と分断を生んでしまう。教育の危うさ。少年のように無垢であること、真に無知であること、あるがままの人を見つめることは世界をつなぐひとつの重要な姿勢であるのかもしれない。
ブルーノの将来の夢は冒険家、という設定がふたりの出会う必然性を作ってたし、お互いがお互いの名前を奇妙がるところも子ども目線からの交わらないはずの人種ということを示唆していた。姉の人形が地下室に散乱していたところからも、姉が反ユダヤ主義の充分な教育を受けていることが見て取れる。
「僕はユダヤ人なんだ」
煙突で何が燃えてるのか、ここから出ちゃダメなのか、夕食食べにおいでよ。無垢なブルーノから投げかけられる問いの数々。
「いいユダヤ人もいるよね?」
「もしいいユダヤ人を見つけられたら君は世界一の探検家ってことになるね」
グラス磨きのシーンは悲しいね。
シュムールを一度裏切ってしまったブルーノは、シュムールの父親を一緒に探すために、収容所に侵入していく。
そこでは「パジャマ」(囚人服)で判断され、人種による分断も本質なんかではなく、ラベリングでしかないということの示唆。痛みを知るということは内に入らないと分からない。そして分断を助長した側の人間が愛息を失うという皮肉。最後のシーンはしんどい。
「医者だよ…前は医者として勤めてた」
「将来の夢はなんだい」
「ありがとう」
「シュムール?そんな名前はじめて聞いた」