「まだ友達だよね?」
幼い子供の視点から描かれる、史上最悪の愚行。
ホロコーストを扱った作品。ドイツ人の子供とユダヤ人の子供の交流を描く。
ジャケットを見ればどんな話か大体の察しはつくと思うが、実際は思ってるより酷い展開になる。「こうなったら嫌だな」と思ったことが次々と実現していく。最悪の結末に向かってどんどん加速していく物語が、悲しくも美しい。
映画史に残るレベルの凄惨な結末ではあるものの、そこに至るまでの過程がいやらしいほど丁寧に描写されているため、この手の作品にありがちな「最悪な結末のために色々捻じ曲がって進む無理のある展開」とか「キャラクターが話の都合で動かされすぎてて違和感満載」っていうのは見られない。これが素晴らしい。徹底的なまでの非情っぷりに、えも言われぬ美しさを感じた。奇人アピールで言ってんじゃないですよ?この作品の構成、美しくないですか?
具体的には、
「収容所に近づいたのはその実態を知らず、ビデオを見た影響で楽しい場所だと思っていたから」
「2人で脱走しなかったのは父親を探すため」
「不穏な気配を感じつつも逃げ出さなかったのは友人に負い目があるから」など。
心情的なツッコミどころや無理がある部分は極力先回りした描写で潰されている。異常な徹底ぶりですよね。
何気ないシーンがちゃんと伏線として機能してるのが素晴らしい。伏線の貼り方が下手だったり登場人物の行動が有り得なさすぎたりする作品って、ハリウッド大作とかのレベルになっても山ほどあるからね。
また、子どもたちだけでなく、父や母、従者など、大人たちの多面的な感情もさりげなく描写されていて良かった。
今作は事実上、お父さんへの報いの物語でもある。自ら選んだ道で行った他者への残酷すぎる仕打ちに対する、運命からの悪趣味すぎる報い。芸術的な因果応報ですよね。
お姉ちゃんの思想が染まっていくくだりも良かった。部屋にポスター貼りまくるほど思想変わるって、あの先生凄腕すぎんか?8歳のガキにつまんねー辞書みてぇな歴史書渡すセンスしてんのに。