カタパルトスープレックス

ル・アーヴルの靴みがきのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
5.0
アキ・カウリスマキ監督の「難民三部作」の第一作目であり、『ラヴィ・ド・ボエーム』(1992年)の続編的作品。そして、ボクにとって最高のアキ・カウリスマキ監督作品。クライテリオン版のBDで鑑賞。英語字幕。何回観ても涙が出る。

映画で普通にやるべきことを普通に(しかし控えめに)やる。飛び抜けた特徴がないことが特徴。シンプルでも奥深さも感じる。逆境の中でユーモアと希望を忘れない。控えめだが多用される音楽。簡単に言えばこれが「アキ・カウリスマキ監督らしさ」だと思います。

いつものパターンだと主人公は逆境に立たされ、伴侶と出会い、希望を見出す。今回は一目惚れではなく、主人公マルセル・マルクス(アンドレ・ウィルム)すでに生涯を連れそう伴侶アルレッティ(カティ・オウティネン)と出会っている。そういうテンプレから外れている部分はあるものの、本作も王道のカウリスマキ節。優しい人しか出てこない!

『ラヴィ・ド・ボエーム』でパリの貧乏作家だったマルセルは本作ではル・アーヴルで靴磨き。それでも生涯の伴侶アルレッティと結ばれて貧しいながらも幸せな生活をしている。ふとしたきっかけで難民のイドリッサを匿うことになるが、アルレッティは病魔に侵されていて。実は自分はガンで伴侶を亡くしているので、とても他人事として観れないんです。

本作でも音楽が出てくる。リトル・ボブは実在するル・アーヴルのローカル歌手なんだそうです。リトル・ボブと奥さんの再会のシーンもいいですね。ジーンときてしまいます。

ああ、本当にいい作品。何回でも観たい。