寝木裕和

メルビンとハワードの寝木裕和のレビュー・感想・評価

メルビンとハワード(1980年製作の映画)
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人生についての映画は有史以来それこそ星の数ほどあるだろうけれど…。
それは凡そ、「人生はこんなに素晴らしいものなんだ」というのと、「人生なんて所詮こんなくだらないことの連続なんだ」と語りかけるもののどちらか。

ジョナサン・デミ監督のこの作品は、絶妙なバランスでその二種類の語り口を混ぜ込んでいる。

大富豪ハワード・フューズと、しがない工場作業員のメルビンが砂漠で偶然出会ってしまったことによって起きたドラマ。

でも、冒頭のその出会いの場面以降はメルビンとその家族の、なにをしてもうまくいかない日常を淡々と描いていくシーンが続く。
そう人生なんてそんなものだ… と、つくづく共感してしまう。ただし、メルビンの自業自得なところもあるのだけれど…。

彼の人生が一変する、ハワード・フューズからの遺言状が届いてから、ふと発する言葉が、最高。
「金なんて入らないと思ってる。でも、それでもいいんだ。
だって、あのハワード・フューズが、オレのくだらないオリジナル・ソングを一緒に歌ったんだぜ!それでいいだろ?」
大切なことっていうのは、日常の取るに足らない瞬間の中にあるのかもしれない、と思わせる作品。
寝木裕和

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