明石です

死霊伝説の明石ですのレビュー・感想・評価

死霊伝説(1979年製作の映画)
4.0
セーラムズロットなる小さな町に帰郷してきた小説家が、そこで起こる変死事件を追ううち、その町の古風な館に潜むトンデモナイ怪物を目覚めさせてしまう話。

スティーヴン・キングの初期の名作『呪われた町』を、当時ホラー映画界のアイドルだったイケイケ男トビー・フーパーが監督したTV映画。TVならではの前後編に分けた計183分(!)という掟破りの長尺で、潤沢な予算と豪華なキャスティングに彩られた画面はとても煌びやか。そして何よりフーパーとキング両人の古典的なゴシックホラーへの愛が溢れる良作でした。

十字架を恐れ、招待なしには他人の家に入れない古典的なドラキュラ伯爵のイメージを踏襲しつつ、ポルターガイストや照明の点滅、そしてドラキュラ伯爵の家中に飾られた不気味な動物の剥製の数々など、映像にはフーパーらしいクラシカルな怪奇趣味が目白押し。

フランケンシュタインや狼男など昔の怪奇映画のポスターに、プラモデルや怪物の仮面が所狭しと飾られた少年の部屋は、『ファンハウス』や『スペースインベーダー』と同じくフーパー自身の子供時代の思い出がそのまま重ねられたような雰囲気で、ほっこりせずにはいられぬ、、なおこの部屋に置かれた模型は本当にレア物ばかりで、当時でさえ入手困難なブツだったそう。セットだけでも並々ならぬ熱意が注がれてますね。

フーパー自身が採用したという、ドイツの古典ホラー『吸血鬼ノスフェラトゥ』を模した真っ白な禿頭に、電球のようにピカピカ光る目ん玉、異様に長く伸びた爪に、野生的な二本の前歯という強烈ルックの亜流ドラキュラはホラーテイスト満載で、この怪物が棺から起き上がってくるシーンは絶叫モノの怖さでした。さらに、何もないところから突如現れたり、家中にポルターガイストを起こしたり、神父がかざした十字架を腕力でへし折ったりと、高貴な身分の伯爵さまであることをやめた本作のドラキュラはかなりの強キャラ。

作中序盤で展開される町の人々のアナザーストーリーのひとつに、脂ぎった太っちょの夫が、ショットガンを持って妻の浮気現場に乗り込み、間男と妻を銃で脅そうとしていたら、怪物が現れ、その怪物が彼らを始末してしまうというシニカルな展開があって、まさかのロジャー・コーマンのヒルゴンと同じ展開だ!と思ったけど、50年代の悪趣味な(褒め言葉です)怪奇映画オタクだったキングなら、そういったB級路線の作品から着想を得てるのはとても自然なことなのかも。

しかしゾンビとは違って、元の姿を保ったまま変身し、美しい姿で甘美な世界に誘惑してくるドラキュラは厄介ですねえ。自分が大切な人にコレをやられたら相当困るだろうなあと思いながら見た笑。『悪魔のいけにえ』と『ポルターガイスト』の監督がこんなにも格調高いホラー映画を作っていることをもっと色んな人に知ってほしい気分だ、、本当に素敵な映画でした。
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