キナ

ポゼッションのキナのレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
3.5
血液と唾液と抹茶ミルクを身体中からジョロジョロと分泌しながら観たい映画。

誰もが何かに取り憑かれ、愛と肉欲を振りかざしてどんどん狂っていく。
仕事にかまけて家庭を放っておく夫への罰なのか、寂しさを理由に不貞を働く妻への罰なのか。
…なんて思っていたら、常軌を逸した展開が何重にも繰り広げられ、あれよあれよという間に狂気の世界に飲み込まれてしまう。

不倫しておきながら激しく逆ギレする妻アンナに苛つき、不倫されたくらいで激しく狂い始める夫マルクに苛つき、色気を纏って謎に誘惑してくる周りの女共に苛つき、前半は特にフラストレーションが溜まりまくる。
中身は薄いけど迫力だけは満点の舞台演劇を観ているような気分になった。

しかし本格的に混沌としてきた中に一つ現れる異形の肉塊。
何がどうしてこうなったのか分からなくなってきたところで、最高の造形のヤツが最後なことをしていて最高の気分になった。
触手が大好きなもので、この手の造形にはもう興奮して堪らなくなるんだ。

ああ縋る先は必ずしも現実の人間じゃなくてもいいんだな、と思えた。
私も生成したい。
生成して所有して、取り付き取り付かれたい。

ヒステリーの表現が上手すぎて、ストーリーに混乱しながらも、誰かが(主にアンナが)叫び喚き出してくれるとテンションをキープすることができた。
ふと「この人なんでこんなにギャーギャー言ってるんだろう」と冷静になりつつ。

サム・ニールの長い脚とヴェロキラプトルに似た美しい顔面、かっこいい彼の気狂った部分を堪能できて良かった。大好き。
キナ

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