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THX-1138のpikaのレビュー・感想・評価

THX-1138(1971年製作の映画)
5.0
中学からスターウォーズにかぶれてたので高校の時バイトしてルーカス作品のDVDを収集し、今作は2回くらい見てみたんだがサッパリ意味がわからずお蔵入りしてた、ってーのを引っ張り出してきた。

こりゃ傑作!
意味がわからずともバッチリと刻印されていたビジュアルインパクトはそのまま嗜好へと育っていっていたようで、10数年を経て改めて見返してみるとツボど真ん中だしめちゃくちゃ面白い傑作だった。
これが1971年の作品とは、DVD化の際にルーカスがCG処理したとのことだけど、それにしても全く色褪せていない。
今作から派生したであろうSF映画は名作からB級までたっくさんあるし、どこからかの影響はあったとしてもオリジナルと謳われても遜色ないルーカスの天才っぷりに痺れた。

SF映画はまず観客に世界観や設定を説明しなきゃならないが、ビジュアルと状況の羅列だけでそれらを伝えてしまうクールな演出がとてつもなくカッコいい!
説明演出からそのままのリズムでドラマが始まり、主人公の行動理由へとスライドしていく流れが見事。

薬による感情や欲望の抑制、システム化された労働と娯楽は、個人というものを消した集団の社会を象徴していて、個を意識するような恋愛感情や肉体的欲求によりシステムから逸脱した者はバグとして排除される。バグとなった主人公はシステムだけでなくその世界そのものから逃げ出そうとする。

映像、台詞の音声、静かに鳴り響く音楽、奇怪な音響が情報という形で観客に理解を誘導させるセンスがハンパなく、抑制された世界ゆえのエモーショナルのカケラもない白と黒の無機質な世界の中、静かに、少しずつ、群の中の個を知り、個人それぞれの未来が枝分かれしていく沈静的な演出が素晴らしい。
低予算SF映画の基盤となったアイデアセンスには唸りまくりだし、後の影響を受けた作品群とは一線を画すほど完璧に統制された世界観は圧巻。

無機質なこれまでとはガラッと変わったラストシーンはビジュアル的にも素晴らしいし、逃亡劇の末路として展開的には終始一貫した姿勢に秀逸さを覚えながらも、内面的にはシンプルに終わらないっつー余韻が見事。
今度ジックリ音声解説でも聞きながらまた見よう!
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