アイヒマン裁判の撮影記録だけに絞り、解説もコメントも何もない作品です。
アイヒマンとエルサレムとのやり取りがバイアス掛けられず観れるのは大変興味深く、内容の濃さに圧倒されました。
アイヒマンとエルサレムのやり取りが脱帽。
念入りに細かく突いてくる裁判官と検事の質疑に対し、感情的にならずひとつひとつ処理して行くアイヒマンの姿はまさに「スペシャリスト」。
知識人揃いのユダヤ人集団に対し、たった一人で闘い抜いたアイヒマンに複雑ながら称賛を送っていました。
アイヒマンは悪の組織人だった。
彼は優秀だったゆえ、戦争の闇に巻き込まれ自分が気づかないまま悪に染まってしまった。
気が付いた時には引き返せなかった。
では、優秀な彼が悪と気付かないまま悪に手を染めるよう仕向けた、仕事の流れや組織を作ったのは誰?
それを思った時うすら寒いものを感じます。
「人間は、ほとんど気も狂わんばかりの状況、ピストルを手に取るのに、熟慮された行為どころか、ほんの些細なことで事足りるような状況に陥ることがあり得ます。それに対してどういう反応するかは、個人によって異なります。私が言えるのは、私だったらおそらくどのように反応したか、と言う事だけです。」
アイヒマン、同胞をガス室に送り焼いたユダヤ人、親族や自己保身に走ったラビ。
アイヒマンのこの言葉が、その全てを表しているのではないのかと思いました。