ぺんじん

吸血鬼ノスフェラトゥのぺんじんのレビュー・感想・評価

吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年製作の映画)
4.6
1922年製作のドイツ産サイレント映画。えっ?そんな昔の映画で、しかもサイレント映画だから怖くないでしょ?…ってノンノン!今観ても人間の根源的な恐怖を捉えるホラー映画の金字塔となっております。
まずノスフェラトゥの造形が怖い!ギラギラと輝く目、尖った耳、ギザギザの歯に鉤爪のような指!当時の最先端の特殊メイクを使って、一目見てヤバい吸血鬼をリアルなものとして画面に映し出している!
このノスフェラトゥ、吸血鬼なので直接血を吸うという所も怖いんだけど、なんと遠くにいる人間にも影響を与える所がヤバい!不動産屋のレンフィールドは気が狂って警官を絞め殺すし、主人公の妻は夫を案じるあまりになぜか夢遊病になってしまう。遠隔でも十分にヤバいのに、主人公夫婦の血を目当てに、棺に入ったまま船でブレーメンまでやって来るというしつこさ!しかも棺で移動しながら、船員にペストをまき散らすという最悪な迷惑行為…ここら辺の描写はヨーロッパ社会が抱く根源的な恐怖がノスフェラトゥに投影されている所だといえる。
突然のラストはいかにも昔のサイレント映画っぽいけど、ドイツ表現主義の映像美は今観ても古びない輝きがある。カール・テオドア・ドライヤーの『吸血鬼』(1932年)が吸血鬼を幻想的な影のように描いたのに対し、F・W・ムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』は市井の人間に迫ってくる直接的な恐怖を描いているように感じる。この厭らしくて、しつこい恐怖描写は『エルム街の悪夢』や『ハロウィン』などの現代ホラーの先輩と言えるかも。
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