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風に濡れた女のろくのレビュー・感想・評価

風に濡れた女(2016年製作の映画)
4.5
ロマンポルノリブート②

大傑作。まず言っちゃうよ。

もう最初っから神代かよ、藤田敏八かよって思い見ていたが(題名からして神代の「恋人たちは濡れた」と「赫い髪の女」のミックス)最後にいたってなんだこの解放感ってなるの。ああ、これは俺の好きな映画じゃないか。もうラスト10分の大開放に打ち止め終わらないからな(ダブルミーニング)。

まず女優、間宮夕貴の佇まいがいい。冒頭いきなり海からずぶ濡れで出てきて着ている服を脱ぎだす。それだけでもう釘づけなんですよ。間宮の雰囲気が芹明香(神代)や秋吉久美子(藤田)の正統な後継者かって感じがいい。この媚びぬ引かぬ省みぬな感じ。最初はどうせ日本映画お得意のぐっすん自己表明でしょって思って見ていたんだけど最後まで観てそれが大きな間違いであることに気付く。これはひたすらに開放なの。セックスは爆発だ!(岡本太郎もきっと言うはず)。

そして展開されるシークエンスの愉快なこと愉快なこと。みんな真剣でありながらポンコツ。特に大好きなのは演劇部四人衆。ああ、こいつら全く映画の主役でもないのに持っていく、持っていく。僕はコントでも見ているんですかと言いたくなる。シソンヌや男性ブランコのコントを楽しんでいるよう。

最後なんて笑い止まりませんからね。ただセックスしているだけなのに笑い止まらないってずるいわぁ。なんだあのふざけた音楽。そして屋台崩し(詳しくは教えてやらない)。もうどのシーンも大爆笑。しかもさりげなく伏線回収するという見事さね。

ここにあるのは神代イズムだよね。神代がセックスを描きながらそこに「開放」を求めた(「開け!チューリップ」じゃないか!)。今ある「呪縛」を断ち切るものとしてセックスは大事なの。そしてその開放は城定の映画に継承されるんだ。だから僕は神代も城定も大好き。でもこの作品でも見事な開放なんだよ。「全ていっそのこと壊れてしまえ」そういったのは坂口安吾だけど(堕落論)、崩壊の後、ぺんぺん草も生えないような更地になった後に綺麗な花が咲くんですよ!この「花畑」の見事さ。これこそロマンであり(ロマンはありえないことを「あるかも」とさせる力だ)ポルノなんだよ。

大満足。セックスは陰鬱なものではない。ましてや自分と関係ない「彼岸」ではない。滑稽で、さもしくて、恥ずかしくて、困惑している「此岸」なんだ。

※性的なものに対しどうしても評価が低くなるが「みんな素直になろうぜ」と無駄に挑発することにする。まあ僕が高すぎなのかもしれないけどそんなことは範疇に入れない。

※そもそも神代映画は「濡れた」という言葉が好きだ。「濡れた欲情」シリーズとして「濡れた欲情 開け!チューリップ」や「濡れた欲情 特出し21人」「一条さゆり 濡れた欲情」がある。さらに「濡れた唇」「恋人たちは濡れた」「女地獄 森は濡れた」など枚挙にいとまがない。今作が明らかなる神代リスペクト作品であることの証明にもなるだろう。
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