エンポリオ

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のエンポリオのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

生きるとは何か、人生とは何か、人間とは何か。
誰もが成長し、老いていく中で一人すくすくと若返っていく男ベンジャミンバトンが遺した日記を追って進んでいく物語。その生の始まりからして苦難だった彼が、何が起こるか分からない人生でその身体に刻み込んだものとは。
どうにも、次第に若返っていくという設定が一人歩きしていて、SFファンタジーというイメージを持ち続けたまま、鑑賞することもなく歳を重ねてきたが、老いばかりが感じられるようになっていくであろう年齢に差し掛かったタイミングで観れて良かった。
真っ直ぐに書けば、物語としてテンポは良くないし、大きな展開が待っているわけでもない。もちろん常に真ん中にはベンジャミンの存在があり、様々なキャラクターの登場人物が入れ替わり立ち替わりスポットを浴びることもない。しかしそれこそがこの作品が提示する人生の、人間の一つの側面なのだろう。
ベンジャミンを中心として多様な人々との接触が繰り返し繰り返し描かれる。スポットが当てられはしないものの、この世界のどこかにはそれらの人々を中心に回る物語があるということに手を伸ばせる余白がこの作品には用意されている。数多くの要素が絡み合い回り続ける人生が、単なる繰り返しという意味でなく循環していくという描かれ方が、反対回りで回り続ける時計というモチーフを筆頭に表わされ、回り続けながら母から娘へと繋がり、進んでいく。この作品が捉えた人生というものを丁寧に描き出す描写や表現が散りばめられていた。
循環、人生を表わしているように感じられる時計を飲み込むハリケーンが段々と迫ってくる、その表現からは強いメッセージ性が感じられた。
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