三樹夫

血を吸うカメラの三樹夫のレビュー・感想・評価

血を吸うカメラ(1960年製作の映画)
3.5
手持ち16ミリカメラに突起物を取り付け女性を刺し、女性の恐怖に染まる顔を撮影する主人公という世界初のサイコスリラー映画。主人公はカメラを通してしか女性と接することはできず、カメラで恐怖に染まる女性を撮るのが彼にとってのセックスになっていると乱歩みのある変態だ。原題はPeeping Tomで直訳すればのぞき魔というタイトルになっている。
変態主人公であるが普段は気弱で物腰緩やかであり、ヒロインとの関係を観ているとどこか主人公に感情移入させられてしまう。自分の変態性癖から脱却しようともがく様はなんとか真人間になってくれと思ってしまうが、ちょっと待てよと、こいつ自分の異常性癖で女性殺してる変態クズやんけ、今更真人間になったところでもう遅いわと、うっかり主人公に感情移入させられてしまう。
また犯罪が露見するかもというサスペンスを盛り込むことで主人公へ感情移入するよう誘導されている。ペンが落ちるシーンは警察にバレると、思わず主人公の側に立ち映画を観てしまう。

主人公は映画監督志望で、今は撮影所で撮影助手をやっている。彼にとっての殺人フィルム撮影はまるで映画監督が作品を作るが如きと、ある種映画監督の内幕披露みたいな内容になっている。殺人という要素を抜けば、カメラを通して初めて憧れの女優と接することが出来る映画監督は珍しいことではないのではないか。好きな女の子がいたとして、自主映画撮りたいから出てくれと頼んで撮影するみたいな、そういうやり方でしか好きな女の子と接することのできない映画監督になりたいマンの話なら切ない青春ムービーにもなるだろう。この映画は変態殺人だけが玉に瑕だ。

変態主人公の映画であるが、照明とイーストマン・カラーによりビビッドな色合いがとても綺麗な映画で、衣装だったり小道具によりコントラストよく原色が画面内に配置されている。
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