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血を吸うカメラのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

血を吸うカメラ(1960年製作の映画)
2.5
No.365[邦題だけは気に入った、パウエル=プレスバーガー映画祭①] 50点

少し前に見てたのだが、どうも気に入らず放置していた。評価も固まってきたので書いてみようと思う。初パウエルに彼の爆死作を選んだ理由は非線形天邪鬼であるからに他ならない。役者の感じといい変な空気といい、私の大嫌いな「フレンジー」を思い出させる。それもあって本作品もあんまり好きになれない。

主人公マークの父親が自分の息子に"モンスター・スタディ"並の精神実験をしていたという超どうでも良い&陳腐な理由付けによって、崇高な殺人鬼として崇めようとも人間の行き着く果てとしてがっつりセンチに流そうともせず、軽い同情を得ようとしている姿勢に腹が立つ。つまり、この理由付けは血を吸ってるカメラを撮りたかったパウエルの後付けに過ぎず、"理解出来ない"に対して"こういう奴もいる"と返す不毛なやり取りのように本作品及びマークを理解することは無駄だと思う。そして、理由が判明するセリフが超説明臭くてゲンナリする。

ヒッチコック「フレンジー」と似た感じを見出したのは物語として主人公が地元で女殺しまくるのは最高に馬鹿げているという点もある。「フレンジー」では主人公の誤認逮捕後も犯人は人を殺していて、脱走した主人公が現場に居合わせて現行犯逮捕するという大団円だったが(犯人は主人公を嵌めといてまた殺してるって馬鹿だよね~)、本作品ではマークがバレて欲しい感情とバレて欲しくない感情の間にいる感じが上手い塩梅で表現できていたと思う。

パウエルはプレスバーガーと共に戦後イギリスのカラー映画界を牽引した敏腕監督だったが、一人で作った本作品によってその後のキャリアは破壊しつくされた。まあ仕方がないとしか言いようがないが、プレスバーガーとの連名作品は面白そうなのでいつか彼らの映画祭でも企画して追悼してやろう。

取り敢えず、最初に殺されるのは金髪のネェチャンと太古の昔から決まっているってことだけ分かって良かったよ。

追記
ヘレンが映画上映中にベラベラ喋る描写も気に入らない。上映中はお静かに、でしょ。
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