アルフレッド・ヒッチコック監督作『ロープ』は非常に有名だが、あの映画は実際に起きた殺人事件をもとにした戯曲が原作だった。
このリチャード・フライシャー監督作『強迫/ロープ殺人事件』は、実際に1924年のシカゴで起こった少年誘拐殺人事件“ローブ&レオポルド事件”に基づく小説「強迫/ロープ殺人事件(Compulsion)」(マイアー・レヴィン著)に沿って作られたので、実際の事件を再現したような映画となっている。そのため、ヒッチコックの『ロープ』とは同じ事件を題材としながら趣きが全く異なる。
二人のエリート大学生による凶行とアリバイが崩れる過程を描いており、二人が裁かれる法廷シーンでは、弁護士役のオーソン・ウェルズが死刑廃止論者としての熱弁をふるって、圧倒的な存在感を見せる。さすがオーソン・ウェルズである。
傲慢なアーティと内向的なジャドは、共に裕福な家庭の大学生であり、冒頭では夜道で自動車に乗っていて一人の人間を轢き殺そうとする怖い場面から始まる。危険な雰囲気。
そして、大学では「ニーチェの“超法規”」を論じて、教授もお手上げ状態。そうした二人は「優越知性」を証明するために完全犯罪を思い付き、少年を誘拐殺人してしまう。
完全犯罪かと思われたら、眼鏡を現場に落としたため、二人の犯行はあっけなく暴かれて逮捕されて、法廷へ……。
クライム映画でも、殺人事件の被害者が子供というのは痛々しい気がしてしまう。
実際に起こった殺人事件に忠実なようだが、もう少しアレンジしても良かったのではないのだろうか?
ただ、この映画、冒頭字幕の出演者でオーソン・ウェルズが1番目だが、なかなか出てこない(笑)
後半になってようやく出て来たが、オーソン・ウェルズが登場してから、途端に盛り上がりを見せるあたりは本当に凄いと思う。