おそば屋さんのカツカレー丼

ガートルード/ゲアトルーズのおそば屋さんのカツカレー丼のレビュー・感想・評価

5.0
あまりに美しく、精緻に組み上げられた画面というものは作為ではなく、奇跡のように見えてしまうことを知った。神性を帯び、畏怖すら覚えてしまうまでに。この約2時間の映画鑑賞はそういう体験だった。

空間における水平的な位置関係が、時間における垂直的な位置関係を露にする。一人が椅子に腰掛け、もう一人がその後ろに立つという構図だけで、もう取り返しのつかない断絶がそこにあることがまざまざと見えてくる。
そう、とにかく空間が時間を暗示している。スクリーンを見つめるだけで、視線も言葉も、それは残滓でしかないことが分かる。愛すらも、そこにあるのは燃え滓でしかないのかもしれない。

一つ一つのシーンを思い出す度に、じんわりと胸の内に広がるものがある。今までになく濃厚で静謐な感動。映画という芸術が紡いできた歴史の重みをまざまざと見せつけられたようだった。