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エピデミック〜伝染病のブタブタのレビュー・感想・評価

エピデミック〜伝染病(1987年製作の映画)
4.0
当時は渋谷で働いていてユーロスペースがまださくら坂(セルリアンタワーの裏辺り)の上にあった頃に見た。
その後はレンタルDVDもなくコレまた現在では見るのが難しい作品。

ラース・フォン・トリアー〈ヨーロッパ三部作〉
『エレメント・オブ・クライム』が「ゴールデンセピアカラー」と呼ばれる全編が黄金色で『エピデミック』が硬質なシルバーにも見えるモノクロ『ヨーロッパ』が青みがかったモノクロで、この三部作はそれぞれの映像が金・銀・(青)銅で作られてるんだろうか?

『エピデミック』はトリアー(本人)が折角書いた脚本がワープロから消滅してしまい五日で新たに書き上げなければならない事態になる。
その新作脚本『エピデミック』を共同脚本家ヴァセル(本人)と共にジャムセッションみたいに練り上げて行く過程で脳内妄想である筈の「伝染病」が現実世界にも侵食を始める。

『リング』原作では、実は貞子は仮想世界の中のウィルスだったって事が『ループ』で明らかになる仰天展開何だけど『エピデミック』も映画の脚本である筈の伝染病=ウィルスが現実に現れる。

映画内映画(脚本)のメタ的展開で現実と幻想の境界が曖昧になって行くドグラ・マグラ。
最後は脳内からやって来たウィルスが脳そのものを破壊してしまったのか。

長回しでほぼトリアーとヴァセルの二人芝居みたいな感じって退屈との感想も多いけど自分としては相当面白かった記憶が。

『エレメント~』の犯人無き連続殺人を追う捜査官。
その迷宮的悪夢世界の行き着く先は「無」であり追っていたのは「空虚」だったみたいな。
で『エピデミック』は脳内から「ウィルス」という形で現実を侵す存在が現れる。
そして『ヨーロッパ』では遂に「ナチズム」という完全に具現化したヨーロッパ中を覆う「死の存在」が世界を無に帰す様な悪意を撒き散らす。
ウィルスの増殖、そして現在にも「ヘイト」や「差別」という形で其れは確かに生き残り、そして現在の「新型コロナウイルス」の蔓延にも繋がる、と完全にこじつけですけど今のコロナ禍以後の世界を描くヨーロッパ三部作に通じる三部作の真・完結編?みたいな映画をトリアー監督には今是非とも撮って欲しいところ。
その前に『キングダム完結編』がありますが。
(つまり其れがヨーロッパ三部作真・完結編か?!)
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