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アントニー・ジマーのtakのレビュー・感想・評価

アントニー・ジマー(2005年製作の映画)
3.5
アンジーとジョニデでハリウッドリメイクされた「ツーリスト」のオリジナル。リメイクと比べたら地味な映画だけど、オリジナルにはオリジナルの良さがある。takはソフィー・マルソー大ファンだから、どうせひいき目だろうって?。はいはい。それは認めるけれど、「ツーリスト」を観てなんか物足りなかったパーツがいくつか見つかった気がするのだ。

"巻き込まれ型サスペンス"との触れ込みだった「ツーリスト」。表面的には女の企みに男が巻き込まれた形になっていて、ラストに大きな見せ場を用意している。その為に「ツーリスト」のシナリオは、最初からアンジーにあらゆる視線を集中させる。そして男はたった一度のキスから、自ら危険に飛び込む無謀な行動に出る。面白いのだけれど、どうも途中から居心地の悪さがあった。「アントニー・ジマー」も確かに男は巻き込まれているのだが、最後まで観ると、実は女も巻き込まれた身だと気付かされる。そのオチはオリジナルの勝ち。

「何故この席に?」
「あなたがタイプだったからよ」
その先はいろいろ言って遠ざけてはいるけれど、悪くは思っていないムードがいい。そしてあの結末。映画の中心にいる男と女にドラマがあるのだ。

しかしながら娯楽映画としての見せ場はオリジナルはやっぱり地味。ホテルに殺し屋が踏み込んだ後で男が駆け込む警察。オリジナルは頼りにできない存在だと示して、不安にさせる駒として使っているが、リメイクはそこに波乱とその先にアンジー活躍の見せ場を用意する。この辺は、役者の持ち味をうまく引き出すリメイクに軍配。さらにアンジーに送られるメッセージもひとひねりしたり、追いかける側にもひと癖あるキャラに改変している。オリジナルを観ると、「ツーリスト」はいろいろ工夫しているのだと納得させられる。

この差は騙し騙されエンターテイメントとしての付加価値をつけたハリウッドリメイクと、振り回す女と振り回される男の物語を伝統的に好むヨーロッパ映画のテイストの違いだろう。

ソフィー・マルソーファンには、ジッパーの不具合を直させる場面や海に誘う場面のあざとい感じがたまらない♡。「ブリキの太鼓」や「愛と哀しみのボレロ」のダニエル・オルブリフスキ、久々にお目にかかれた。
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