ヨーク

プロスペローの本のヨークのレビュー・感想・評価

プロスペローの本(1991年製作の映画)
4.0
こんなもんね、もう凄いと言うしかないですよ。面白いとかつまんないじゃない。凄い。
俺はピーター・グリーナウェイは『英国式庭園殺人事件』しか知らなくてまぁあれはあれでタイトルに殺人事件とあるくせに中盤過ぎるまで誰も死なないという結構驚く構成の映画なのだが、本作『プロスペローの本』はその程度のことは些事だなと思えてしまう作品であった。ここまでぶっ飛んだ映画は久々に観た気がするぜ。
ちなみにあらすじはというと基本的には超文豪シェイクスピア様の最後の戯曲である『テンペスト』を原作としたものである。シェイクスピアくらい知ってて当たり前だろっていう高慢かつ嫌味な態度で以てしてあらすじ紹介を端折りたいところなのだが、まぁ簡単に言うと権力争いに敗れた偉い人が島流しになるんだけど、その島で娘と一緒に魔術の研究に没頭して精霊エアリアルの力を手にしたプロスペローがそのエアリアルの力で憎き政敵たちを島にやって来させて復讐をしようとするのだが…というお話ですね。タイトルになっている『プロスペローの本』というのはプロスペローが操る魔法について書かれた魔術書ということである。
ちなみに『テンペスト』という戯曲はシェイクスピア作品の中でも結構人気がある作品なのでTVドラマも含めてかなりの数映画化もされているらしい。本作のように直截的に『テンペスト』を原作とする作品以外でもオマージュ的に使われている作品はさらに枚挙に暇がないであろう。そう言えば現在(2024年8月時点)テレビ放送されたガンダムの最新作である『水生の魔女』もネタ元の一つとして『テンペスト』があった。そんなわけで直接間接問わずに『テンペスト』を扱った作品は沢山あろうが、正直この『プロスペローの本』ほどぶっ飛んだ作品はないのではないかと思う。
感想文の最初に書いたように、こんなの凄いとしか言えないじゃん、という映画なのである。きっと本作の公開当時に「こんなのやられたらもうまともにテンペストの映像化出来なくなるじゃん!」と思った映画関係者は多いのではなかろうか。
凄い凄いと言いながら映画の内容を全く書いていないのだが、その凄い部分を一つ挙げるとするなら、まず無修正〇ンポの数が凄いですね。俺が今まで映画で何本の無修正チ〇ポを観たか覚えてないが一夜にしてその数が倍くらいになったんじゃなかろうか。仮に今まで俺が100本の無修正チン〇を映画で観てきたのだとしたら本作でも100本くらいはチンの棒が無修正のまま出ているというわけである。いや別に無修正ちん〇んが沢山出てきたらそれだけで面白い映画なのかというとそんなことはないと思うが、凄い! と言いたくなるのは分かるだろう。あと映画冒頭で観客の度肝を抜くであろうシーンとしては小便小僧の爆発的な勢いの小便もある。あんなん絶対笑うよ。いや下ネタばっかかよ!? と思われそうだが実際映画の内容がそうなのだから仕方ない。
まぁでも映画の出だしからそんなのばかりと書くと何となく察する賢明な諸兄もおられるだろうが、本作はかなりアート寄りな作品ですね。俺がグリーナウェイで唯一観ていた『英国式庭園殺人事件』も全くもってストレートな娯楽作品ではないが、それでも退廃的な雰囲気はありつつも普通のドラマ的な映画ではあった。でも本作は魔法もアリの世界で幻想と奇想と夢想が入り混じるノーボーダーな世界観の作品で、しかもミュージカル的な内容なのですよ。さらに言えばミュージカル映画ではなくミュージカル舞台という感じなのでめっちゃ1カットが長い。その上でチ〇ポもおっぱいも画面上に乱舞しまくるのである。
そりゃもうスゲェ! って言うしかないって。やりたい放題にも程があるだろグリーナウェイ! って思いましたよ。ここまで自らのイマジネーションを実現させたらさぞ楽しい撮影だったんじゃないだろうかな。あとは当然ではあるがマイケル・ナイマンが手掛けた音楽も素晴らしいですね。さらに衣装デザインはワダ・エミとくるのでその数々の個性のぶつかり合いは圧倒的で無二な映像を作り上げていると思う。ただ、それだけはっちゃけた映画の割にお話的には完全にベースとなる『テンペスト』そのままなのでそこはもっとハジけてくれてもよかったかなという気もするのだが…。
でもまぁお話しだけはそのまんまというのは、何だか魔法と幻想と奇想と妄執が入り混じる復讐譚の最後で精霊エアリアルに今までの礼を述べて現実へと帰っていくさまが、映画が終わって劇場を後にするのと重なって何だか凄くいい満足感があるのですよ。正直、本作が面白い映画かというとそれはどうかなー、となるのだが何か凄いものを観た感は中々他では味わえないものでしたよ。
そういう意味では一度は劇場で観る価値がある映画のは間違いないと思いますね。しかし『禁断の惑星』といい『テンペスト』を元にした映画は怪作になるのか!?
凄い作品だった。
ヨーク

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