さわだにわか

異魚島のさわだにわかのレビュー・感想・評価

異魚島(1977年製作の映画)
4.0
よくわからなかった。なんでも済州島の沖の方に古くから伝わる信仰と奇習に支配された島があって(ウィッカーマンみたいな)、異魚島というのはそこの島民が存在を信じている常世の国のようなものらしい。島の漁師の男は死んだらそこに行くのかそこに引きずり込まれて死ぬのか…そのへんもなんかよくわからなかったのですが、とにかくそういうのがある。異魚島に男がドロンすると代わりの男が島に補充される。とにかくそういうのがある。あるということになっている。

それでそこにリゾートを建ててやろやないかという都会のビジネスマンたちがやってくる。その異魚島って常世の国なんでしょう?じゃ「ホテル異魚島」なんて名前にしたら景気がいいじゃないですかガッハッハ!みたいな感じでやってくるのですが、しかしそこからウィッカーマンのような食人族のような事態になってしまって、あぁ田舎はこわいなぁ、田舎の島なんかめっちゃ嫌だなぁ逃げ場ないし、って感じになります。

おもしろそうでしょう。でも実際見るとおもしろよりも困惑と不可解が勝る。俺の感覚で言えばアミカスの淡泊なオムニバス・ホラーのスタイルで百年の孤独のいくつかのエピソードを映像化したような映画。生殖の寓話の脈絡のない数珠つなぎ。水死体と死姦したりする壮絶なシーンもあるくせに温度めちゃくちゃ低め。おもしろいはおもしろいがおもしろ映画を期待すると?で脳が埋まる。

たぶんそれは都会と田舎という要素が一つの映画に出てきたときに両者を対立概念として捉える見方が頭に染みついているからなんじゃないかと思った。都会の経済合理性VS田舎の不合理な蕩尽、みたいな。そういう対立軸は映画にリズムを生むし、そこで描かれる世界の把握を容易にする。この映画ではそういう二項対立で都会と田舎を捉えてない。構造主義的アプローチというか、厳格な交換規則と生産規則がこの島にはあって、それは数少ない都会パートで描かれる借金の取り立てと事業計画に対応している。都会も田舎も実は同じルールに従って動いているので、一見異なる文化に見えてもその二つは容易に繋がってしまう。

そう書けばロマンチックな気もするがどのように繋がるかといえば半島の工業廃水による水質汚染が島の環境に影響を与えて出生率が低下してしまうとかそういう繋がり方なのでロマンとかは基本的にない。
人間は徹底してモノとして扱われて交換の対象となるし、人間を生産しない人間はモノとしての価値が認められない。唯物論ファンタジーとでもいうんだろうか、こういうのは。個人の情愛や信念と見えるものもしょせんは社会の下部構造が生み出した、そのルールの中でそうあらねばならぬという機械的な強迫観念に過ぎないと言わんばかり。冷たい。

とにかく、よくわからなかった。よくわからない映画としてはおもしろかった。
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