明石です

ゾンビ3の明石ですのレビュー・感想・評価

ゾンビ3(1979年製作の映画)
3.8
物語よりグロで語るイタリアンなパワー系ゾンビ映画。

監督はポルノ映画が主戦場のアンドレア・ビアンキ、そして作中の目玉である特殊メイクの担当は、なんと予算の大半を投じて(!)雇ったという『地獄の門』のジーノ・デロッシ。そんなわけでシナリオなんてあるはずもなく笑、やたらに緩慢なストーリーと、情け無用のグロ描写が見どころの愛すべきB級ゾンビ映画。

前年の1978年に公開されたジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』が1作目。本作同年のルチオ・フルチの『サンゲリア(原題は”ZOMBI2”)』が2作目、そして3作目がコレ、、という意図で付けられた、ロメロもフルチも全く無関係の第3作目!!ちなみにアメリカ配給時(なのかな?)に改題されたタイトルが”NIGHT OF TERROR”、直訳で恐怖の夜、、ちゃんとしてる笑。

とはいえ「ゾンビ3」と銘打つからには、前作とどう繋がってるのかという視点で見てしまうのが性で、なにしろ日本の配給会社が勝手に決めたタイトルではなく、イタリア本国での製作時から”ZOMBIE3”だったとのことで余計に。しかし、そもそも続編という体をとっているにもかかわらず、ゾンビが存在する事実が登場人物たちに全く共有されてない時点でもう察し笑。「前作」のサンゲリアでは、ゾンビが街に氾濫したところで幕切れだったのに…!なお本作はエトルリアの古代文明と絡めてゾンビ化の説明がされていて『サンゲリア』も『ゾンビ』も丸無視な潔い姿勢に笑っちゃう。

そして主人公の子供がシャイニングみたいな特殊能力の持ち主で、なんなら彼の母親も軽い予知能力を秘めているという設定で、そういうオカルトと絡めた展開はゾンビ映画でけっこう珍しい気がする(ゾンビ自体がオカルトでは?というのは一旦考えないことにして)。しかしその設定は中盤以降なくなっていて、監督自身が忘れてしまったとしか思えないくらいの潔さ笑。

地中からウジ虫まみれの汚物ゾンビ(褒め言葉です)がぬるりと立ち上がってくるさまは、特殊メイクアーティストがフルチ映画のお方なこともあって、まさしくサンゲリア!な出来で、天井からウジの雨を降らせた『サスペリア』や、窓を開けたらウジの嵐が吹き込んでくる『地獄の門』など、イタリアホラーの伝統であるウジ虫激押しを継承した感じは、そうコレ!という謎の安心感(「ゾンビ1」ことロメロ映画はゾンビが主役ではないので、彼らが墓から出てくるシーンとかは全然なかったりする)。そしてゾンビの動きがノロい分、人間同士のいさかいで魅せたロメロ映画に対し、本作はウジやゴカイまみれのキモすぎるゾンビの顔のドアップで魅せるという工夫もなされている笑。

「うー」とか「あー」とか、くぐもった声を出しながら迫って来るあのゾンビのイメージとは少し違い、なんだか農民一揆のような感じでトボトボやってくる彼らは、遠目には人間と区別がつかず、しかも声を出さない分、余計に人間臭い歩き方が足音含めて目立ってしまい、なんだかゾンビというよりも、昔の映画の吸血鬼みたいだなという印象でした。開け放ったバルコニーからヤツらをライフル狙撃したり、黒装束の集団に儀式めいた襲われ方をしたりと、明らかに『地球最後の男(オメガマンの方)』を意識したような細部は、ロメロを真似るのではなく、ロメロが真似した吸血鬼の方を真似るのだ!という謎の意気込みを感じる。

何より今作のゾンビは、自主的にクワや斧を取って家の壁に穴を開けたり、皆で協力して丸太で扉を突き破ったりする協調性の高さが魅力で笑、ついさっき墓から出てきたばかりなのにあまりに賢くて笑っちゃう。そしてフルチリスペクトの製作陣がただやりたかっただけとしか思えない(なにしろ予算の大半を注ぎ込んだのはそこなわけだし笑)、ゾンビが集団で人間を押さえつけ、電動カッターで頭を粉砕するシーンは、これはなんの映画?と思っちゃった。こうもB級感満載だと、途中から何の続編だとかそんなことは全く無視して、ガハガハ笑いながら楽しめるので良いですね。

いかにもサンゲリア風なのにどこか気の抜けた、まるで迷宮にでも迷い込んでいくような雰囲気のピロンピロンした音楽は楽しいし(全然怖くない笑)、ゾンビの頭を鈍器で破壊するシーンは、スローモーションが多用されてることも手伝ってなかなか迫力がある。そして母子の近親相姦描写も笑っちゃうし、ゾンビになった子供が母親の乳首を食いちぎる場面は、ゾンビ映画史に鮮烈な残るシーンとして記憶したいところ(ゲテモノに対する許容度の高いイタリアホラーでさえ、子供を使ったエロ描写は撮れなかったみたいで、子供に見える成人俳優が起用されてるのもミソ)。とにかく色々とツッコミどころ満載の楽しい映画なのです。
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