明石です

ロバート・デ・ニーロの ブルーマンハッタン/BLUE MANHATTAN I・哀愁の摩天楼の明石ですのレビュー・感想・評価

4.8
望遠カメラで人々の私生活をこっそり撮影し、覗き見芸術を作ろうとする頭のネジが外れた男の話。ブラックコメディ全開のデパルマの初期のインディペンデント映画。主演は誰だかよく分からないどジャケットに写ってる人物。いつも覗き見している女性を、覗き見で得た情報を生かしてデートに誘い、望遠カメラで自分との濡れ場シーンをこっそり撮影しようとする変態ペテン師の姿にサイコデニーロの萌芽が見られて幸せ。覗き見映画を作るために〇〇まで爆破しちゃうし。

全体を貫くコミカルな作風の中に、突然人種問題へのアンチテーゼが絡む文字通りブラックコメディな仕上がりなっていて、中盤はややチグハグでまとまりに欠ける印象。ネタ自体もあからさますぎて、、しかし後半で「黒人になる劇」とやらが始まってからはかなりシリアスで怖い映画に様変わり。デパルマはコメディよりホラーの才に秀でたことがよくわかる。そしてデニーロのキレ演技はさすがですね。こんな優男風のルックスからこんな底の見えない狂人が飛び出すとは笑。

下敷きになってるアイデアが完全に裏窓じゃんというのは危険思想なのかな。初期の頃のデパルマは、作品がヒッチコック的だと言われるのを嫌っていたらしいでず、中期以降は自分こそ正当な後継者なのだと言わんばかりに自信を持っていたそう。そんなデパルマの溢れんばかりのヒッチコック愛が見れる貴重な作品ですね。しかし黒人になるショーの迫真さは素晴らしかった。この劇だけで1本映画作ったらよかったのに笑。裏窓のオマージュが蛇足に思えるくらい良かった。そしてラストのカタルシスは圧巻ですね。全体的に地に足のつかなかった作風を吹き飛ばすような突飛な発想に天晴。最後のデニーロの”Hi, Mom!”が怖い怖い笑。

——好きな台詞
「あの胸の谷間を見たか。フェリーニの映画じゃ無理だ。俺だから撮れる」
明石です

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