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森は生きているのくりふのレビュー・感想・評価

森は生きている(1956年製作の映画)
3.0
【森は控えめに生きている】

たまたま図書館でDVD見つけ、そういえば未見だった、と借りてきた。

アニメ史では名作?と言われる一本ですね。日本語吹き替えのみで、子供向けにかなり大仰な演技をしており、耳に痛い。後にYoutubeで言語版を見てみたが、そちらの方が明らかに、音がキレイに収まっている。

また、自分が見た版はカットされているようだ。なので、あくまで私が見た版での感想ということで。

これすべて手描きと思うと、動かすという技術はスゴイ。降りしきる雪にも、静かに情感こもっている。この時代、フルアニメで24コマすべて描いている。半ば肉体労働では。…ソ連ならではとも?

が、動きに躍動感、意外性がない。基本、人物は棒立ちで演技していて、超自然的アクションを見せるところは殆どない。現代のアニメを見慣れた視点からは、窮屈にも感じてしまう。

あと、テンポがね。1.5倍速くらいで見ると相応しいかんじ。…まあ、この辺りは、そういう時代だった、という事ではありますが。

原作は戯曲だそうで、物語としてはよく出来ており、いいお話でした。

12月それぞれの精が、毎月交代して自然を司っている、というアイデアに豊穣な夢を感じるし、教訓的な部分にも嫌味がない。

現代でも、劇団がレパートリーとして上演しているようですね。実際、演劇向けの物語構成でしょう。

で本作を見て正直、アニメでなくとも表現できるな、と思ってしまった。例えば、同時代のソ連アニメだと『雪の女王』を思い出しますが、自分の男を追って(笑)、猪突猛進、どこまでも走る続けるヒロイン少女のような、特出した動きがあれば、また違ったと思います。

こちらのヒロインは灰かぶり姫タイプですね。苛めにひたすら耐えて、誠実に努力することで幸福を掴むという。いや、子供にこう伝えたいことはわかります。…それが超自然的思想だったとしても(笑)。

原語ノーカット版を見て、評価変えたら追記します。

<2019.7.12記>
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