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ザ・バニシング-消失-のmatsukawaのレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
4.5
途中まで普通に良質なサスペンスなのだが、犯人のプロフィールが明かされて以降、おじさんの「はじめての誘拐」が始まり、だんだん何を見ているのか分からなくなる。
何度も失敗を重ねながら、少しずつ改善して次第に成功に近付いていく過程が、時にユーモアを交えながら描かれる。やろうとしている事の異常性を除けば、普通の人の普通の試行錯誤だ。
見ているうちにナチュラルに薄っすら応援し始めてしまう。
途中、知り合いに出くわして浮気ナンパと勘違いされるくだりでは、「違う!そんなゲスなことしてるんじゃない!」と歯痒くなったりする。浮気より遥かに酷いことしようとしてるのに。

表の顔と裏の顔も二重人格的ではなく、一貫した人格で描かれ、動機も欲望ではなく素朴な探究心として描かれる。
異常者の異常な行為ではなく、普通の人が正常な精神状態で行う凶行。

異常と正常の間の皮膜がものすごく薄い。
そのあまりの薄さに、自分が立っている地面が消えてしまうような不安を感じて恐ろしくなる。そういう恐怖。

凄く嫌だけど忘れられないなこれ…
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