KAJI77

ザ・バニシング-消失-のKAJI77のレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
5.0
オランダ,フランス発の伝説的サイコ・ホラー作品。

「自分自身の目で見、自分自身の心で感じる人は、とても少ない。」とアルベルト・アインシュタインは言いました。
人間の持つ最も厄介な狂気が「知的好奇心」に他ならないことは、今作に収められた、CGも音楽も殆どなしに赤裸々にそれを映し出した106分を体験すれば白日の元に晒されます。

この迸る狂気の構造というものの歴史は古く、紀元前の古代ギリシアでは既に、物のイデアを追求する「目的因」と、ものの存在に運動を与えるきっかけである「始動因」の2つを用いた説が確立している。
つまり、「知りたい」という気持ちが「知る」という行動に直結した時、人はその因果の前には手出しが出来ないということを、哲学者達はずっと昔から知っている。

今作はその図式化、もとい表現に成功していると感じる。

というのも、「知りたい」という感覚はレックスにせよレイモンにせよ同じ形のものであるから、車での会話劇というのが実に対等に進められていき、その感覚を持たない僕達の目には異様な調和に見えます。
でも、この作品が本当に恐ろしい点は、よくよく考えると同じ感覚の「種」というのが、僕らが常日頃抱いているものと、まるで相違ないという所だと感じます。
やろうと思えば誰にだってできる事だ…。

こればかりは同系統の映画作品である『セブン』でも、『ゴーン・ガール』でも『ファニー・ゲーム』でも描ききれていないように感じる。

ラストシーンの狂気は本物でした。
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