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翼のない天使のpikaのレビュー・感想・評価

翼のない天使(1998年製作の映画)
4.0
なんて素晴らしい作品なんだ!始まりから終わり(寸前)まで胸が締め付けられ目頭が熱くなってシャマランたまらん!

「シックス・センス」「アンブレイカブル」「ハプニング」とシャマランは子供目線の描写をかなり丁寧に描いている印象で、ハリウッド映画によくあるような大人のオマケではなく子供の感情を省かずにキチンとクローズアップさせる監督だなぁと思っていたけど、完璧スルーしていた「シックス・センス」以前にこんな素晴らしい子供の映画を作っていたとは!今更ながら納得。

要素だけ取り除けばよくある話というか、少年が殻を破るような成長譚だけど、御涙頂戴なベタなヒューマンドラマにならず真摯なドラマになっているのは今作以降で存分に発揮されるユーモア溢れるシャマラン独特な演出センスゆえなのか、それに比べると妙ちくりんさは微塵もない、どころかひとつひとつの出来事を優しく丁寧に描写してドラマを展開させる美しく暖かい傑作だった。

こういう成長譚ってフィクションの中のことと割り切るものではなくとても身近な、大人目線でも過去に経てきた普遍的なものだから、余計な煽りなんて邪魔なだけだし、大人になって忘れてしまった些細な「疑問」を子供目線で語るという切り口がとても素晴らしく、子供目線に寄り添えるシャマランの演出手腕がこれでもかと発揮されている。
作家主義的な演出重視ではなく、脚本からして見事なところがやっぱり凄いなと。

ただそれに関しても相も変わらずと言ったところのラストが、、、せっかくそうじゃない方向へ行っていたのにそう締めるのかと。。ちょっとガッカリ。
それまでで十二分最高だ、傑作だと楽しめていたし、シャマランの魅力はオチではなく過程なんだと再評価している今なので、オチがどう転んでも今作は何度も見たくなる大切な一本にはなるが、最後に普通の着地をしてしまうのは非常に物足りなかった。
鑑賞後調べたところによるとシャマランは実際にカトリックの学校出身だったとのことで、自分自身を多少なり投影しているのかもしれない。
私個人的には物足りなくとも宗教的な視点からだと素晴らしいラストだろうからこれでいいのか、、、うーむ。しばらく経ったらまた見てみよう。
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